
網走の道の駅に停泊する網走流氷観光砕氷船 おーろら
前提問題として、一般的に我々は流氷のことを知らなすぎる。
オホーツク出身の私ですら、流氷が何者なのかよく知らなかったくらいだ。
アムール川から流れてくるっぽい・・・ということくらいしか知らなかった。
目次
日本国内で流氷が観察できるのはオホーツク海だけ

おーろらのデッキに展示されていた流氷の実物
日本人からすると北海道は最北の凍てつく大地であるが、世界的に見れば温暖なイメージがあるフランス南部やスペイン、地中海などと同じくらいの緯度にある。地理的なことで言えば、意外と北海道は南の方にあるのだ。
世界的に見れば寒い地方の海水が凍った現象である流氷が見られるのは、オホーツク海が北半球における南限だという。
つまり、流氷は世界的に見れば北海道より北の海ではありふれた現象だけど、日本国内で流氷が見られるのは北海道沿岸のオホーツク海ということになる。北海道沿岸でも日本海側や太平洋側は海流の関係で流氷は来ない。
オホーツク海の流氷はロシアのアムール川が原産地
オホーツク海の流氷がどこからやってくるのかというと、北海道よりもっと寒い-40度くらいのシベリアの海からやってくる。
海水は塩分が低くなると凍りやすくなるが、大量の淡水をオホーツク海に供給するロシアのアムール川の河口付近が産地だと言われている。アムール川の河口付近で生まれた流氷がオホーツク海を漂いながら成長して、やがて紋別や網走など北海道のオホーツク海沿岸にやってくるそうだ。
網走の観光船で流氷を見るのは実は難しい(?)
オホーツク海に流氷が来るのは上記のような複数要因が重なり合っての奇跡のため、冬季の流氷シーズンに網走の流氷観光船に乗れば、常に確実に流氷が見られるというものでもない。
その理由は下記のようなものだ。
風向きなどによって流氷があったりなかったりする
網走の流氷観光船「おーろら」の公式サイトでシーズン中は朝8時頃に当日の状況が発表されるが、当日になるまで見込みはわからない。
年によっても異なるが、平均的には2月上旬~2月下旬くらいが見られる可能性が比較的高いと思われる。
1月や3月でも見られる場合があるが、本当に自然現象なので遠方から出向いても空振りで終わる可能性もある。
波の状態によっては観光船が欠航したり短縮航路に変更になる

海の状態によっては港付近のみ短縮航路になったり流氷が見られないことも
冬季の網走は厳しい気候である。海が荒れていると観光船は欠航になる。
筆者が網走近辺に滞在した時は3日連続で全便欠航。海が荒れると数日単位で欠航することもあるから、予備日があったとしても予備日も欠航・・・という可能性もある。
また、海が荒れている場合は短縮航路として通常60分で4500円くらいのところを、20分で1200円で網走港近辺までの往復になることもある。流氷も見られないし、高いか安いかでいうと微妙なところかと思う。
最近でも知床の観光船が観光客もろとも海の底に沈んだりする死亡事故が起きているし、過去に流氷の中で8時間も立ち往生したこともあるから、安全最優先で運行している結果だから仕方がない。流氷を見れても死んだら高すぎる乗船料になる。
網走で3日間粘ったけれど流氷が見れなかった体験記
網走の観光船に乗って流氷が見れた! ひゃっほーい! みたいな動画やブログは割りとあると思うんだけど、3日間粘ったけれど結局、流氷が見れなかったという体験記も誰かの役に立つのでは思って書いてみよう。
正直、流氷が見れた! ひゃっほーい! という人並みな記事を書きたかった(笑)けれど、これはこれでネタになるのかしらん。
ちなみに時期としては、もうすぐ観光船が運行終了になる3月中旬。
1日目 高波と大荒れで欠航

欠航すると船内の見学が無料でできるらしい(時間帯限定)
見るからに海が荒れているし、こんな小型の船で出るのは個人的にも怖いから欠航やむを得ずという感じ。
現地に来て欠航を知った残念がっている人たちのために、無料で船内を見学できるというサービスが行われていた。
欠航に関する情報や流氷の有無は、おーろかの公式サイトと、海上保安庁の海氷情報センターのサイトで確認することができる。天気予報や波の高さに関する情報を収集したり、流氷と対峙するのは大変だ。
2日目 やっぱり高波と大荒れで欠航
海の天候というのは地上と違うなぁと感じる。
網走は強風で吹雪いていても、少し内陸の北見だと、風もないし穏やかな天候だった。
海は荒れ出すと2~3日は荒れが続くと考えた方が良いみたいである。
3日目の正直 短縮航路で慰め航行
普通の観光客だったら網走近辺に3日間留まらない気がするけど、3日目は海が荒れているから沖合には出られないし流氷も見れないけれど、20分くらいで網走港近辺までの往復1200円で航行します、という案内が公式サイトにアップされていた。
3日間も流氷を待った人間というのは、思考回路が少しぶっ壊れていて、もはや正常に物事を考えることはできない。
流氷は見れないけど、1200円と普段より相当安いし、ここまで待ったから乗らないでオチオチ帰れるか! と思ってしまうようで早速乗船。
1200円と言っても青森~函館の津軽海峡を渡る約4時間の船旅が1800円とかなんだから、船旅という意味ではかなり割高だし、こんなの乗る人あんまりいないのではと思ったけど、乗船時間が近づくと急にどこからか中国人の団体観光客が沸いてきた。

3日目にもなると何かが間違っている気がしてきた
中国人は若い人はデッキで写真を撮ったり盛り上がっていたけど、なんでこんなもの乗らないとならないんだ風に船内で仕方なく乗っている風な人もいた。中国人のツアー客って北海道の観光地にはどこにでもいるけれど、何を考えているかはよくわからない。
後日談 大荒れの後には流氷が戻ってくるという不思議
帰りのスケジュールの都合で網走を離れていたが、翌日、天候はさらに悪化して大雪や強風で石北本線や釧網本線が運休するほどになった。
ああ、もうこれで今シーズンの流氷は終わりだなと思って、怖いもの見たさで観光船のサイトをチェックしたら、まさかの「You can see the drift ice (流氷を見られる)」という表示が。
大荒れの影響で遠ざかっていた流氷が戻ってきたという、珍しい状況らしかった。港まで接岸したのも今シーズン初だという。
うーん、5連泊していれば見れたというのが結果論だけど、夏場だったらキャンプ場で5連泊くらいは頑張れば網走近辺に滞在できそうだけど、冬場で5連泊は結構きついよね。網走で見るところもなくなっちゃうし。
受付の人と少し喋ったら、2月上旬~中旬くらいが見れる確率が高いというものの、その時期は北海道&東日本パスもないし、気軽に鉄道で網走に行き来するのが難しいという問題がある。
2025年3月のダイヤ改正で旭川~網走に特別快速ができたりして石北本線は利用しやすくなったけど、観光船で流氷が見れる日が来るのだろうか。