1983年公開の日本映画『南極物語』のレビュー、個人的感想、ネタバレあり、高倉健出演あり。
タイトルからするとペンギンとかアザラシの映画に思いがちだけど、南極調査における実話を元にした犬映画。
目次
南極の過酷な環境に犬を置き去りにした話
今は南極大陸に外来動物を連れて行くことはできないが、昔の南極調査隊は犬ぞりなどに使うために樺太犬を10数頭ほど連れて行った。
しかし、天候悪化で南極に留まるのが危険と判断した調査隊たち。
急遽、偉い人の命令で南極から撤退するも、調査隊は犬たちを連れて帰る余裕がなく、鎖に繋いだままマイナス40度にもなる酷寒の南極に置き去りにする。
映画中盤以降は犬のサバイバルシーン
よくある犬映画は飼い主とか人間と犬との触れ合いが描かるが、南極物語では人間が消え去った後の南極での犬たちだけのサバイバルシーンが中心。
実話では10数匹のうち2匹を残して大半の犬が死亡しているが、撮影では1匹も死んではいないという。
南極よりも北極の方が人間が行き来しやすいのと気温などの環境が緩いので、多くの撮影は北極で行われたらしい。
犬がそんなに好きではない自分からしても、クラックと呼ばれる氷の隙間から冷たい海に犬が沈んでいく描写や、痛々しい描写が多くて犬が可愛そうに思えるシーンが多かった。プロの役者犬だとしても犬が可愛そうに思えた。
美談にされてるが人間の都合で命を弄ばれる犬たち
終盤では犬を置き去りにした調査隊員が再び南極を訪れ、2匹が生き残っているという感動の再会シーンで終わる。
犬を南極に置き去りにしたことは当時の新聞などでも批判されたり、社会的にも大きく注目されていたというが、100%人間の都合で南極に連れて行かれて大半の犬が絶命しているのだから、美談ストーリーを作ったところで、かえって人間の愚かさが浮き彫りになってしまったような映画に思えた。
全篇通してヴァンゲリスの美しいメロディが聞こえるのが何とも、人間の愚かさを覆い隠しているかのようで、かえって観るのが辛くなるような映画であった。
犬が好きな人とそうでない人で印象が違うと思うけど、どっちかというと犬が嫌いな自分からしても犬が可愛そうに思えたのは確かである。
南極物語というか『南極における愚かな人間による犬惨殺物語』と思えてしまった。