高倉健をはじめとしした日本人俳優が多数出演する1989年公開のアメリカ映画『ブラック・レイン』の感想、レビュー、ネタバレあり。
目次
大阪版ブレードランナーとも言える映画
この映画を一言で言うと、大阪版ブレードランナーである。
監督は映画ファンなら知らぬ人はいないほどの名作SF映画『ブレードランナー』のリドリー・スコット氏。
ニューヨークのシーンから始まるが、映画の主な舞台は日本の大阪。
道頓堀の繁華街で食事をするシーンや、ネオンっぽい風景、微妙な漢字の看板などはブレードランナーのそれを彷彿とさせる。むしろデジャブ。
ブレランが1982年の作品だから、7年後ということで作風や映像の雰囲気がかなり似ている。
日本人俳優の出演にも注目
高倉健をはじめ、日本が舞台なだけに日本人俳優が数多く出演している。
英語のできない大多数の日本人の中で、英語が喋れる日本人として高倉健がニューヨークから来た警官と行動を共にする。
高倉健と言えばヤクザ役になりがちだけど、この映画ではヤクザを追う警官役を演じている。
実際の高倉健も英語力が高かったと知られているが、日本人の耳からしても聞き取りやすい英語だから、英語学習者が見る映画としてもよいのではないだろうか。
日本文化へのリスペクトが感じられる作品
ブレードランナーの時点でも雑踏の音声に日本語が混じっていたり、日本へのリスペクトを感じる場面は多かったが、この作品はその延長線にあるようにも思う。
アメリカ人が箸を使ってヌードルを食べる場面や、アメリカと日本の文化の違いを強調したセリフ、日本が敗戦後にアメリカの文化を押し付けられた話なども出てくる。
沖縄が敗戦後に27年にも渡ってアメリカ統治下にあったのは有名だけど、日本本土についても7年間ほど、占領下にあったのは今回調べるまで自分もよく知らなかった。
沖縄ほどに強い統治ではなかったけれど、もう少し違ったパラレルワールドな歴史があれば、日本の公用語が英語になってたり、日本語がローマ字表表記に統一されていたり、アメリカ以外にもイギリスやロシア、中国などと分割統治されていた可能性もあったから、自分が今生きているパラレルワールドの中一つの日本はアメリカ色が比較的薄い方なのではないかとも思う。
いや、スマホやPCの基本ソフト(OS)はもちろん、主流なビジネスソフトなどが全部アメリカ製で、日本人の多くが仕事でもプライベートでもアメリカに常に料金を支払っているのを考えると、実際はそうでもないかな。
余談 30年に渡りハリウッド映画が大阪ロケを避けたきっかけ
大阪ロケのハリウッド映画って珍しいな~、とか呑気に思っていたがwikipedia他によれば、この映画は元々は東京の歌舞伎町で撮影される予定だったという。
ただ、撮影時の交通規制などで警察の協力が得られなかったことで歌舞伎町での撮影を断念。比較的、協力が期待できた大阪に舞台が移ったのであった。
しかし、フィルムコミッションが存在しなかった時代ということもあり、大阪でも思ったように撮影することができず、10週間の予定が5週間で切り上げられたという。
そして、大物監督によって大阪での撮影の困難さがハリウッド界隈に吹き込まれた結果、30年に渡りハリウッドが大阪ロケを避けるようになったのだという。
そういう意味で考えると、ある意味、貴重な大阪ロケの映画である。