Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

6日目 雨の紋別

丘の上ホテルから眺める遠軽の朝焼け。

コーヒーの作成を試みる。

このころは経験不足により固形燃料で熱い湯を沸かすことができず、ぬるいコーヒーしか作ることができなかった。

最近、道東地区でよく見かけるようになったのが空き地に設置されたソーラーパネル。寒い北海道で太陽光発電なんて効率よくできるんだろうか。本州の業者に唆されたのでは、と心配になる。

湧別方面に向かう。道の駅に温泉施設があるので風呂に入りたかったからだ。しかし、そのチューリップの湯は10時オープンで、少し早い。湧別の街まで行って、博物館などを見学する。

この地域は松前藩宗谷場所、根室県などを経て現在に至る。北海道も昔は3つの県に別れていたが、今で言う道東、ひがし北海道は根室県に相当する。湧別は昔から住みやすいところだったらしく、6000年くらい前から人が住んでいたそうだ。

かみゆうべつ温泉、チューリップの湯。500円。ボディソープやシャンプーなども備え付けで、サウナや、きれいな花壇などが設置された露天風呂まである。休憩施設もあり、東京近郊なら1000円くらいしそうな内容だ。

ミックスフライ定食。760円だったかな。湧別はオホーツク海やサロマ湖があって、漁業の街だ。ホタテの本場で、まずいわけがなかった。こんなうまいホタテフライを食べたのは初めてで、ぷりっぷりとした柔らかい貝柱と、化学調味料などではない自然が生み出すまろやかな風味が忘れられなかった。

その後、紋別市を目指す。

もともと消耗していた後輪側のブレーキシューが北見峠の下りで擦り切れてしまったので、新しいものを紋別のイオンで購入できればと思った。紋別の市街地は遠く、その手前のコムケ湖というところにキャンプ場がある。先にテントを設営してから、街に向かおうと思った。

コムケレイクサイドホテル。国道に看板が出てたり、キャンプ情報の本に紹介されたりしているわりに、利用者は誰もいなかった。テントを設置して街に向かおうとしたところ、雨がパラついてきた。この旅、はじまって以来の雨だ。すぐに雨具を装着する。

なるほど。500円の安物の作業用雨ガッパは、完全防水だが汗つまり水蒸気を全く通さないため、雨を防いでも汗で衣服が濡れる。ゴアテックスなどのハイテク素材とは違うのだ。ただ、あとで熊本のキャンパーのおじさんに教えて貰ったが、自転車だとどんな上等なレインスーツでも蒸れるのは仕方ないという。ホームセンターの2000円くらいのやつで十分なんだそうだ。

キャンプ場から市街地は遠い。アップダウンもある。片道2時間近くかかったように思う。どうにか街に着くも、雨も止まないし、はて、イオンってどこにあるんだろう・・・とうろつく。小さいときにまだサティだった時代に来たことはあるが、20年近く前の記憶だから思い出せない。去年、紋別に来たときに発見できなかったから、湧別~道の駅の間にはないだろう、ということしかわからなかった。

イオンは坂の道を上がったところにあった。幸い、紋別の市街地はそれほど広くはないので15分くらいで見つかった。

紋別のイオンに駐輪。雨をしのげる場所は、この数十センチの軒下しかなかった。

この紋別のイオンに限らないが、イオンの自転車売り場は時間帯や日によって、整備士がいたりいなかったりする。レジの女性はいても、自転車のことがなにもわからないので、買い物しかできない。私の自転車は一般的なロードバイクなどと同じキャリパーブレーキ。だが、苦労してきたわりに、ここにはVブレーキ用のブレーキシューしか置いていなかった。これが使えるのかどうか知りたかったが、整備士がいないのでわからない。一応、整備士の出勤日を教えて貰うが、それまで紋別に滞在するわけにもいかない。

これから雨の夜道を2時間かけてキャンプ場まで戻ることを考えると、荷物になるマトモな食料は買う気が起きなかった。イオンと道の駅のスーパーで食事を調達したが、ビスケットやスナック菓子のようなもの数点を買った。去年も行ったカマボコ屋に行って、天ぷらを買ったが「どこまで行きますか?」と何度も聞かれた。質問の真意はいつ食べるか判断することで、レンジアップするかを決めるのだが、私は温めなくて結構とだけ答えた。しかし、どこまで行くかという質問をしつこくされる。

大雨の中、誰もいないキャンプ場へ2時間かけて自転車でビショ濡れになりながら帰り、狭いテント内でビショ濡れの体をタオルでピチピチと拭きながら、すべてが嫌になった状態で震えて食べるのだ・・・という、アホ&バカ丸出しの数時間後の自分の境遇を想像しつつ、それを口に出して伝えるのがとても億劫だった。そんな境遇が待っているのだから、その私の所有物となった天ぷらは、温めないで、ただそのままお渡し頂ければ結構だと思った。

2時間かけてキャンプ場に戻ると、入り口付近にキャンピングカーが2台停まっていた。雨は少し弱まっていたが、岡山ナンバーのキャンピングカーの老夫婦がチーズケーキを食べている。

「あんた、あのテントの人? 車がないのにテントだけあるから、おかしいと思ったら、自転車だったんだね(笑)」
「キャンピングカーで周っているんですか?」
「うん、友達と周っているよ」
「羨ましいですねー」

年金暮らしと思われる年代だが、冷静に考えたら、ちっとも羨ましいと思わない。人生の終盤の頃になって、キャンピングカーで金に物を言わせて寂れた北海道のこんな田舎を周って、自転車旅の人間を半笑いにする人を羨ましいなんて思うわけがないが、社交辞令が口走ってしまう。

このキャンプ場は街から遠いだけでなく、蚊が異様に多かった。蚊は大雨だろうと活動に影響しないようだ。

私は今までの自転車旅の経験から、衣服をレイヤードシステムにしている。いわゆる重ね着で体温調節できるわけだ。ビショ濡れで一晩過ごすのはリスクが高いので、ビニール袋に入れて濡れないようにしたユニクロのヒートテックに着替える。暖かい。このヒートテックのおかけで、風邪をひかずにすんだ。帰ったら、ユニクロに感謝状を贈ろうと思った。

よくキャンプ本などではフリースを推奨してたりするが、ヒートテックの方が軽くて嵩張らずに、しかも暖かい。

深夜になっても雨は強まるばかりで、テントに浸水しないか気が気ではなくて、よく眠れなかった。ただただ、早く朝になって欲しかった。

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7日目 紋別脱出と温根湯温泉


早朝に紋別を脱出し、湧別のセイコーマートへ寄る。キャンプ場からは、実は紋別の街よりも、このセイコーマートの方が近い。ここは立地的にサロマ湖周辺やオホーツク海沿岸を通って旅するライダーやサイクリストがよく立ち寄るセイコーマートである。何組か自転車旅の人も見かけた。

再び遠軽の街に戻った頃には天候が回復し、太陽が出てきた。濡れた衣服やテント、寝袋などを河原で乾かす。傍目には浮浪者にしか見えないだろうが、ここは地元であって、今のところ人生で一番長く過ごした街だから、仮に何かあっても大丈夫。

今日この街を出たら今後しばらくは来れないな、と思い、大通りの肉屋で旨いフライドチキンを買う。一平の時にも悪気はないのだが「ここのラーメンは麺が旨いですよね」という微妙な褒め方をしてしまったが、この肉屋でも「都会のフライドチキンより旨い」と微妙な褒め方をする。実際、ケンタッキーとかのフライドチキンよりずっと旨い。一平のラーメンも実際、麺とスープのバランスが絶妙なのだ。

時間は午前11時頃だった。街を出ようと思ったが、あと30分待てば蕎麦屋の藤月庵が開店する。もう滅多に来れないことを考えると、藤月庵に行きたいと思った。渡ってしまった橋を戻り、藤月庵前で開店を待つ。

こんな田舎では開店前から並んで待つという光景を見ることは珍しいが、街を代表する蕎麦屋のため、1組の家族が先に待っていた。

リーズナブルで美味しい卵とじ蕎麦。私は10年くらいの間、沖縄そばを除けば、蕎麦屋というのは藤月庵と、関東にある「ゆで太郎」という激安蕎麦屋チェーンにしか行ったことがない。

蕎麦湯なんかも付けてもらう。

食べ終わり、もうやり残したことはないな、と思いながら北見方面に向かう。

遠軽から北見方面への国道には、素敵な名前の付いた橋がいくつもある。この無名橋も私の好きな橋だ。一見すると無名橋は橋には見えないが、下に小川がある。

ここは、ちゃちゃワールド。生田原地区にある木材のおもちゃなどを展示している施設だ。地元ではかなり知られた存在だが、実は行くのは初めて。イメージとしては無料かぜいぜい200円くらいだろうと思えたが、大人600円と入館料が結構高い・・・。入館を断念する。

売店や休憩室は入館せずに利用できるので、どうしても金がない人は休憩室だけでも利用させて貰おう。WIFIも使えて空調も効いていて、住んでもいいくらい快適である。

生田原駅前にあるホテルノースキング。ここは日帰り温泉が500円。地元ではよく知られた場所だが、同じく行くのは初めて。この森しかないような地域にあって、とても都会的な建物だ。結婚式や会合など、この地域全体のイベントを受け持っていると思われる。ちゃちゃワールドと同じ会社が運営している。

生田原駅は全国でも珍しい、特急が停車する無人駅。よく考えたら、遠軽町には特急の停車駅が4つもある。たぶん、こっちの方が珍しいだろう。

北見では留辺蘂地区にある温根湯温泉のキャンプ場に向かう。温根湯温泉もよく知られた観光地だが、鉄道でアクセスできないので足がないと行きにくい。

北見周辺は全国的に有名な玉ねぎの産地。下にある黄土色っぽいのは全部玉ねぎで、後ろのボックスみたいなやつに玉ねぎを入れて出荷する。

温泉街。営業していない店が多いようだけど、営業してたとしたら、この人口過疎なオホーツク地域にあって、越後湯沢とかに匹敵するくらいの規模ではないだろうか。

大きな温泉ホテル。ノースキングで温泉に入ったばかりなので利用しなかったが、日帰り入浴もできる。

こちらは私が泊まった北見つつじヶ丘パークホテル。無料なので長期滞在っぽい人が屋根のある遊具の下にテントを建てていた。北見市街地に近いためか、この閑散期にあっても10組くらいはキャンパーがいて、今までのキャンプ場の中では一番にぎわっていた。

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8日目 広島の家出おじさんと茨城のゲイライダー


便所に近い場所にテントを張ったため、テントの片付け作業をしていると、色々な人が通りかかる。10組くらいいるキャンパーのうち、バイクが半分、残り半分が車という構成で、自転車は私だけだった。

「自転車で周ってるの?」

便所から出て来た50代くらいの北海道農村部によくいるような風貌のおじさんに声を掛けられる。

「はい、でもこのへんが地元なんです」
「本州から来たんじゃないの?」

おじさんの頭の中では、北海道を自転車旅行しているような人は、みんな北海道に憧れてきた内地人なのだろう。見たところ、おじさんは軽ワゴンで寝泊りしている車中泊キャンパーっぽかった。

この頃の私は、連日のアウトドア生活で少々ストレスが溜まっており、ブチ切れ寸前だった。紋別でのキャンピングカー老夫婦の件もあって、アウトドアであってもアウトドアではないような、そしてなんと言っても、自転車旅行者を下に見ているように感じられる車中泊キャンパーに対しては、全く良い印象を持っていなかった。

「僕は広島から来たんだけど、もう3ヶ月も北海道を周っているよ」
「それは羨ましいですねー」

また思ってもいないようなことを言ってしまう。社会人生活が長くなると、社交辞令だけがうまくなって、本心で物を言えなくなってしまう。

だが、この手のおじさんは、こちらから何かを学ぼうとかの目的ではなく、からかい半分で話しかけているだけだ。適当に持ち上げてさえおけば不快な思いをあまりせずに、短時間でサクっと消えてくれるだろう。

このキャンプ場は規則があってないようなものだが、厳しいキャンプ場は車中泊を禁止している。純粋にアウトドア生活をしたいという人達が迷惑するからだ。キャンプ場には普通のキャンプ場とオートキャンプ場というものがあって、車の人はオートキャンプ場に行ってくれ、というのが今のキャンプ界の流れである。北海道も例外ではない。捻くれていた私は、おじさんに車中泊ができなさそうなキャンプ場を紹介しておく。

「この間泊まったんですが、遠軽という街を知っていますか?」
「海の方だっけ?」
「いいえ、山の中ですが、この地域では比較的大きな街ですよ」
「マウイとかがあるところかね?」
「そこも合併して遠軽町だけど、地元では遠軽と言えば旧遠軽町内を指すんですよ。遠軽のキャンプ場は無料だし誰もいなくて、とても快適でしたよ」
「北海道は無料のキャンプがそこらじゅうにあるしね。・・・まぁ、頑張ってね」

なんで、こんな地元の広島に居場所がないとかの理由で、こんな日本の端っこの北海道を3ヶ月も車でブラブラしているだけのおじさんに「頑張って」などと言われないとならんのか。なんなんだ、この気色悪い感覚は。おじさんとはそこで別れた。

やはり、この手の車中泊ブラブラおじさんは、北海道を長期間旅することで、現地の文化を学ぶとかの目的があるわけではなく、家出している中学生と同じレベルだと確信した。頼むから、さっさと広島に帰ってくれ。ブラブラおじさんから学ぶことなど何一つない。今後、こういう家出系おじさんの相手をしても時間の無駄なので、キャンプ場や道の駅などでは警戒しようと思った。

ブラブラおじさんが消え去ってから、テントや洗濯物を乾かしたりした。その間に今後の予定を考える。

ここの近所に北きつね牧場がある。子供のころ行ったことがあるようにも思うが、北きつねさんが見たいと思った。何時から始まるのかわからないが、いくら何でも午前7時前ではやっているわけがないだろう。開くまで待つのも時間が勿体ない。先に進むことにした。

近所のセブンイレブンで朝食を買う。この地域では伝統的にホットドッグには砂糖をまぶして食べる。嘘だと思うなら、縁日に出向くか、セブンイレブンで観察してみれば良い。ケチャップではなくて、砂糖を付けてくれと頼む人が大半だ。

「なまらめんこいヨ」
北きつね牧場の看板。生きているうちに、またこの地域に来れるチャンスがあれば、その時こそは絶対に行きたいと思う。さようなら、北きつね牧場・・・。

温根湯を後にし、北見市街へ向かう。

そういえば、ブレーキシューが交換できないままだった。これから釧路方面に向かうにあたって、峠を越えないとならない。後輪のブレーキがまともに使えないのでは釧路に行けないので、北見では何としてもブレーキシューを入手せねば・・・。

温根湯から北見市街に向かうと、まず三輪というロードサイド店が密集した典型的な郊外型商業地域がある。今は北見駅前なんかより、三輪の方がずっと賑やかだ。ホームセンターを覗いてみる。ホーマックにVブレーキ用のものはあったが、値段が高かった。もう一軒の向かいの某ホームセンターに向かうと、同じものがずっと安い値段で売っていた。

ただ、それが私の自転車に使えるかわからなかったので、店員さんに声を掛ける。ところが、たまたま声を掛けた、近くで品出しをしていた20歳くらいの小柄なギャル風女性店員が・・・な、なまらめんこいヨー。本当、なまらめんこかった。

この数日間、視界に入るものと言えば、森と空だけ。キャンプ場で出会う人達も、半分浮浪者みたいな小汚い男ばかり。出会う女性と言えば、夫婦で旅している中高年のおばさんのみ。キャンプツーリングの現場では、こんな都会的でめんこいギャルを見る機会なんて全くないのだ。埼玉を出発して初めてだったと思う。北見は都会で素晴らしい。めんこいギャルが沢山いる。こんな小汚い自転車旅行なんて辞めて、できればずっと北見にいたいと思った。

めんこいギャルが店長らしき男性を呼んできてくれるが、その人もわからず、自転車担当の違う店員さんが来る。「たぶん大丈夫だと思うけど」と微妙な回答をされる。しかし、付けれなかった時に困るので、近くに自転車専門店がないか尋ねると、次の交差点を曲がったところにあるという。個人経営の自転車屋は高くつくと思ったので、『自転車あさひ』がないか尋ねたが、店員さんは自転車あさひを知らなかった。この地域にはないのだろう。

教えて貰った自転車専門店を探してみたが、それらしい店はなかった。そんなときにはイオンだ。自転車あさひどころか、北見にはでかいイオンがあったはず。休日だから整備士もいるはずだ。しかし、イオンに行ってみると、でかいイオンの割りに自転車コーナーはなかった。北見はホームセンターや自転車屋が沢山あるから、あえてこのイオンでは自転車を扱っていないのだろう。

しかし、それは間違いだった。すぐ近くにイオンバイクというイオン系列の自転車専門店があった。

なんでも、北見がイオンバイク進出の北海道1号店らしく、道内では他には札幌にあるだけらしい。早速、ブレーキシューを見て貰う。店員さんによると、Vブレーキ用のものは使えなくて、キャリパーブレーキ専用のものを買わないとならないらしい。いくつか商品があったが、シマノの800円くらいのやつを買う。これで釧路に行けるだろう。

時間は昼ごろだったが、旅に出て1週間くらいが経ち、精神的にも肉体気にも疲れが溜まっていたので、ホテルに泊まりたいと思った。ローソンのWifiを利用して、スマホで検索してみる。最安値が1泊3800円くらいだったが、宿泊者の評価が悪い。「もう少しだけお金を出して全国チェーンのホテルに泊まれば良かった」そんなふうに書いてあるレビューを見ると、さすがに泊まる気が失せる。

そういうネガティブキャンペーンをやってるのかと思うくらい、全国的に有名な大手宿泊予約サイトでは、ボロクソに評価されているホテルが北見には異様に多い。5段階評価で★1つとか★2つのホテルが多い。基本的に値段に対しての満足度だから、格安ホテルでも満足度が高ければもっと評価が高くなるのが通例だし、あまりにも評価の低いホテルは宿泊する人がいなくて閉鎖しそうだが、北見は周りに大きい街もないし、周りの田舎のホテルよりはマシだから、評価とは関係なしに経営が成り立つのだろう。

今後のルートとしては、釧路方面には向かうにしても、今年は網走経由で行きたいと思った。網走まで行けば、網走湖畔に無料のキャンプ場がある。頑張って、そこまで行こうと思った。

北見を出たら釧路に到着するまで、めんこいギャルなんて、もうまず絶対見れないだろう。目に焼き付けたものの、そう思うと、涙が滲みそうなほど悲しかった。

人通りの少ない休日の北見駅前商店街。悲しいかな、北海道で駅前に人がいるのは札幌、旭川、函館、ぎりぎりで帯広の4都市だけである。

前回、気にはなっていたが立ち寄れなかったTOBUに行ってみる。あの池袋とかの東武鉄道とは何の関係もないTOBUだ。ここは実は想像以上に素晴らしい店。イオンを目指しているというよりは、遠軽や美幌のシティを大きくしたような感じで、とにかく惣菜類が素晴らしい。

カツ丼380円。米は7分付き。通常の米が10分精米で、7分付きというのは7割精米していることらしい。白米より栄養価が高い。他に豆腐を買って、旭川から持ち歩いている醤油を使って冷奴にして食べる。

国道39号線を進んで美幌町へと入る。

橋の入り口部分の柱(正式にどう呼ぶのかわからない)に、北きつねの置物を発見。内地だったら、こんなめんこい置物は心無い人にすぐ持っていかれてしまうだろう。

ここは、めまんべつメルヘンの丘というところ。私は聞いたことなかったが、撮影スポットとして有名らしい。この地はかつて女満別町という町名だったが、北見周辺の市町村を一手に引き受ける女満別空港があることから、数年前に大空町という俗っぽい名称に変わったのだった。

今日の宿泊先、網走湖レイクビューホテル。

手を伸ばせば届くくらい網走湖に近い場所にテントを張れる。海も近くて、湖も多い場所で華やかだから、自転車の人はいなかったものの、ツーリングライダーが10数組以上もいる。

近くの網走観光ホテルで日帰り入浴が出来るので、夕日が沈むのを見届けてから、貴重品だけ持って温泉へ行く。その前に、自転車のブレーキシューを交換する。案外、簡単にうまくいった。

網走観光ホテルは泉質も良く、貴重品をフロントで預かってくれたり、スマホの充電もしてくれて、とても親切なホテルだった。ただ、元々ホテル(本物の)に泊まりたい気分だっただけに、日帰り入浴をしてからテントに戻ることを考えると、とてもゲンナリした。

食事だけでもこのホテルでしたいと思ったが、館内図に載っていたテナントのラーメン屋はぶっ潰れており、レストランは閉店後だった。せめて、売店で何か摘める物を・・・と思ったが、このホテルの売店は物価が高かった。缶ビールが350円、日本酒に至っては500円する土産用の高級ワンカップしかなく、全く手が出せない。

網走観光ホテル内。ホテルに泊まりたい思いが高まる。

だが、冷静に考えたら、海の上とか空の上にいるのではなくて、網走駅まで陸続きで約4Kmの地点なのだ。少し自転車を走らせればコンビニくらい見つけられるはず。無理して物価の高いホテルの売店で買う必要はない。そう思って街まで行ってみる。

2Kmくらい走ったところにローソンがあった。駅前まで行けばセイコーマートがあるが、このローソンは豪華でイートインスペースがある。300円くらいの高級カップラーメンを食べ、スマホで旅の情報収集をする。明日のルートを検討し、明日こそはホテルに泊まろう、明日こそホテルに泊まらないと死んでしまうと思い、網走と釧路のほぼ中間にあたる弟子屈町という所の激安温泉ホテルに予約を入れた。22時、テントへ戻る。

すると、風呂に出かける時にはなかったが、私のテントのすぐ隣接したところに、デカいハーレーに乗った二人組みのライダーがテントを張ったようだった。もっと奥の方に行けば、キャンプ場はいくらでも空いているのに、なんでこんな近くに張るのか。しかも、バイク乗り入れ禁止なのに通路にハーレーを停めて、半分通路を塞いでいる。アホか。

つくばナンバーの茨城から来たこのライダー2人組みは、ゲイなのか狭い1つのツーリングテントに入って深夜まで談笑していた。テントは防音性能がないので、基本的なマナーとして、深夜帯の談笑は厳禁である。

しかも、そいつらがテントを張る前にいたはずのティーンエイジャーのライダーは、あまりにもウザったくテントを移動したようだった。