Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

9日目 網走発、摩周温泉で一休み

朝の網走湖。キャンプの醍醐味の一つが、その場所だけの朝の景色を楽しめることだろう。

壁で囲まれた狭い部屋ではなく、テントのファスナーを開けた瞬間からネイチャーライフが堪能できるのがキャンプの醍醐味だ。

好き好んで都会に住んでいるのかどうかは人それぞれだろうが、一般的に都会人はこうした醍醐味を求めるので、ロケーションの良いキャンプ場に人が集まる傾向にある。こういう北海道とかのキャンプ場の場合、施設の優劣とか、都会からアクセスしやすいとかは全く関係ない。

網走駅で記念撮影。釧路方面に行く普通、快速列車と、札幌に行き来する特急が停まる駅。駅名の看板が縦書きなのは意味があって、網走刑務所から出所した人達が『横道にそれない』ことを願う思いから縦書きなのだとか。日本のほとんどの駅名看板は横書きなので、日本は横道にそれやすいとも言えるだろう。

朝日に輝くコスモス。網走の街はこじんまりとしているが、北海道の地方では珍しく、あまり寂れている感じはそれほどしない。北海道に来たことがない人でも、流氷とか網走刑務所のおかげで網走の知名度は高い。

この日、たまたま網走は縁日であった。北海道は9月~10月くらいにかけて縁日が多い気がする。短い夏が終わって、そろそろ冬支度という頃だ。

オホーツク海に最も近い駅として知られる北浜駅。映画の撮影か何かで有名になった。無人駅。

北浜駅の内壁には、この駅を訪れたサラリーマン達の名刺が沢山貼り付けられている。面白いのは、東京メトロやJR西日本みたいな有名企業に勤めている人を除けば、地方のしがない企業に勤めている課長など中間管理職の名刺が多いことだろう。会社の慰安旅行とかでここに来て、雰囲気で張っていくのだ。

プライベートの旅行で、こんな辺鄙な場所に自分の意思でわざわざ来て、勤めている会社の名刺を張っていくという理解しがたい人も中にはいるのかもしれないが・・・。大抵は、会社の行事で連れて来られた人間だろう。あまり見る価値もない。九州地方の市役所の人とかの名刺もあったけど、公務員が公共の駅施設に名刺を勝手に貼り付けてはいけない。最近の傾向としては、何書いているかわからないが、中国語の手記のようなものが多い。

ここは北海道遺産の小清水原生花園という所。植物に興味がある人など知識層の人なら、かなり楽しめる場所だ。常日頃、東京ディズニーランドに行きたがっているようなミーハーな人には楽しめないから注意。

馬は普通に横になって眠る。牧歌的な風景だ。

小清水町を経由し、摩周温泉のある弟子屈町に向かう。このへんは、じゃがいも街道というらしい。じゃがいもというと十勝のイメージだが、この一帯はじゃがいも畑が多い。じゃがいもを満載したトラックが走っていたりする。

屈斜路湖の東側の野上峠を目指す。326mと比較的低い峠だが、結構な急勾配で美幌峠よりきついと思った。

頂上で小休止していると、サイクリストのおじいさんが通り過ぎていった。観光地化されておらず、展望台など娯楽は一切ない。

摩周温泉の少し北の方には川湯温泉という温泉街がある。温泉街の外れにある公園で少し休憩。ここの温泉は入らなかったが、傷口とか目に染みるタイプの温泉らしい。

平屋の古い団地のような建物があったりしたが、どんな人達が住んでいるのだろうと思った。違う地域から温泉施設に働きに来ている人とかだろうか。

道東屈指の立派な摩周・道の駅。ライダーや一般観光客が集結する。

弟子屈町は人口7,000人程度だが、国定公園や温泉など観光資源に恵まれているので、その何倍もの観光客がどこからともなくやってくる。

ちなみに、道の駅は基本的に税金で建物を作り、内部のテナントは民間経営だ。普通の民間ショップでは考えられないくらい豪華な建物のことが多いのは、税金が投入されているからである。

ついでに言うと、北海道経済の10%以上は公務員による経済である。国土の狭い日本を救済するべく、北海道開発法という法律を盾に“日本人”が開発した場所が北海道だ。

摩周温泉の飲食店街。

この地域には昔、弟子屈飛行場があったが廃止されて最寄の空港は中標津空港になる。それでも、札幌への直通列車がないので、むしろ東京の方が近いような印象だ。内地からの移住者が多いという。

今回宿泊したホテルニュー子宝。素泊まりで3500円くらい。これぞ温泉という熱い温泉が楽しめる。観光客というよりは、周辺で道路工事などをしている作業員の方が多かったように思う。部屋は和室。4人くらい泊まれる部屋なので、1人だと広くて快適。部屋にもユニットバス・トイレがあるので便利。やっぱ、建物の中で布団で眠れるのは良いことだ。

Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

10日目 長野のライダー

ホテルでぐっすり休んでから、7時過ぎに出発する。ロビーは作業服姿の工事関係の人が沢山いて、現場事務所のようだった。

玄関前には荷物満載のツーリングライダーのバイクが停められていた。40歳くらいの中肉中背の色白男性のバイクで、ホテルの送迎バス運転手のおじさんと「今日は摩周湖の周りを走るんです」などと、ノホホンと話している。

釧路まで70Kmくらいだから昼過ぎには着けるかな、と思った。そして、摩周温泉も悪くないな、機会があったらまた来てみたいな、と思いつつ自転車を走らせる。

鉄道だと釧路の先に根室がある。そもそも、自転車でこのへんを走ることは人生で2回目とはいえ、そう頻繁にあることではない。釧路の先に根室があるという先入観が邪魔して、『根室の標識に従って走れば、必然的に釧路に辿り着く』という間違った考えを生んだ。

たぶん、どこかに分岐点があって、釧路方面と別海経由の根室方面に向かう道路が分かれたのだろう。道路標識から釧路の表示が消えてずいぶん経ってから、道を間違っていることに気づいた。

本来なら国道391号線に進まないとならないところを国道243号線を突っ切ってしまった。去年、こんなホルスタインばかりいる道は通らなかったような気もしたが、やっぱり違う道だった。本来の391号線に戻れる道路があったので、そこを進む。アップダウンの多い道だったので、かなり体力を消耗した。

勉強になったのは、別海の読み方はべつかいでもべっかいでも、どっちでもいいらしい。

途中、道でホクレンの旗を拾う。

これはホクレンのガソリンスタンドで売っているらしく、ツーリングのライダーが記念に買っていって、バイクの後ろに挿して走ったりする。落としても気づかず、ツーリングの時期は道に落ちていることが多い。緑は道東とか、地域によって色が違うらしい。

ホクレンは正式名称をホクレン農業協同組合連合会という。農協の一種のようなものだが、ホクレンは全農の下部組織ではない。札幌駅前の一等地に大きな本部ビルがあり、東京、大阪、名古屋、福岡などにも事務所を構える超巨大組織だ。その事業は農業関係に留まらず、ガソリンスタンド、コンピュータシステム開発、建築、運送など、ほぼ『ゆりかごから墓場まで』。

昼過ぎには釧路市内に着けると思ったが、遠回りしたせいで12時頃にやっと茅沼駅近くのシラルトロ湖キャンプ場に到着。走りながらプランを考えたが、有料だが1泊300円台と安いし、とりあえず2泊分払ってテントを張らして貰い、釧路地区探索のベースキャンプにしようと思った。

受付を済ましてテントを張っていると、正体不明の40代くらいの男性に声をかけられる。

Unknown「コンニチワンコ」

こちらの様子を見てくる男性。最初、このキャンプ場の管理担当者が説明に来たのかと思ったが、フルフェイスヘルメットやライダー用のスーツを着ている風貌から察するに、この人も今日ここに泊まるのだろう。わざわざ挨拶に来るなんて律儀な人だ。

「あなたも今日ここに泊まられるんですか?」
「いやいや。あんたは、こんなところに泊まるの? 湿っぽいしさぁ、熊が出そうじゃん」
「私は北海道で生まれ育った人間ですが、JRの駅がすぐ近くにあるし、そこでおばさんたちがパークゴルフをやっています。こんな人が沢山いる所には熊なんて出ないと思いますよ」
「ふーん。あれ、君はチャリダーさん?」

私はチャリダーと言われるのが嫌いだ。サイクリストと言って頂きたい。語源を調べればわかることだが、チャリというのは子供のスリのことを指す。

「まぁ地元ですし、どうなんでしょうね」
「俺は長野から来たんだ。北海道ツーリングは2回目なんだけど、テントは持ってるけど、ずっとライダーハウスかホテルに泊まってるよ」
「テント持ってきたのに使わないんですか?」
「だって、こんなところに寝るの寂しいじゃん」
「でも、人の多いキャンプ場ってうるさくて眠れなかったりするから、私は寂しい所の方がむしろ好きですけどね」
「ふーん。俺は無理。やっぱ釧路のホテルに泊まるわ」

と、言い残して彼はホテルに向かった。

「軟弱だから俺は釧路のホテルに泊まる」と言い残してキャンプ場を去っていくライダー。

そんなことをいちいち言いに来るような人も、広い世の中にはいるのだと思った。

なんか、道外から北海道にツーリングに来ているライダーって、しょうもない人間ばかりのように思えてならなかった。私はバイクの免許を持っていないから、バイクを運転できる人をすごいと思っていたし、メカにも強くて、ロマンとか何かしらの哲学を持って行動している、孤高な人達だと勘違いしていた。

しかし、実際には茨城のライダーといい、この長野のライダーといい、尊敬に値するような人達ではなかった。

この件があってからは、私はライダー全般に対して悪い印象を持つようになった。エンジンの爆音で動物が逃げるし、空気が汚れる。40くらいにもなった大の男が寂しくて1人ではキャンプ場にも泊まれないとほざいている。長野に帰って、おやきでも食ってなさいと思った。私はこれ以降、ライダーのことをゲイダーと呼ぶことにした。

気を取り直して、私は私で、釧路の街に向かう。まだ寝るには早いし、あくまでベースキャンプを設営しただけである。盗まれたりしてもいいような、そう重要でない荷物はテントに置いていく。街のコインロッカーに預けるより安い。

釧路に向けて走る。しかし、さっきのライダーのことを考えるとイライラする。なぜ、あんなライダーに心が乱されるのか?

釧路の街までは小さな峠を2つくらい越えていかなければならない。アップダウンが激しい。荷物をほとんど積んでいない、クロスバイクに乗った地元と思われる若いサイクリストにあっけなく登りで抜かれる。速えぇ・・・バッカじゃねえの。峠の登りをあんなに速く走れるなんて、すげえよ。尊敬のまなざしで見送る。私の分まで頑張ってくれ・・・。

釧路市内に入る。まだ日が沈むまでは時間があるし、最悪、キャンプ場まで戻れなくても、適当に街で夜を明かせば良いと思った。少し遠いが、釧路市動物園に行くことにした。動物園は街の北西の方にある。しかし、今は15時30分頃で、16時までに入場しないとならない。まだ10キロくらいある。

したがって、ぶっ飛ばさなければ間に合わなかった。

テントを積んでいないので高速走行しやすく、15時59分に到着。ぎりぎりで入場する。

しかし、この釧路市動物園はなまら広い。北海道内ではマイナーな動物園だが、贅沢なほどの広さを誇っている。爬虫類とかの動物の種類ごとにゾーンが別れているが、ゾーンを移動する時に軽い登山道みたいな所を通ったりする。動物の種類も多く、30分で見て周るのは正直厳しい。ゆっくり周れば半日くらいは過ごせるくらいの規模がある。

したがって、1種類の動物を見れる時間は4秒と見積もった。








見る時間がないので主要な動物の写真だけパッパッと撮って、早足で周って、あとでゆっくり写真を見て楽しむ作戦にした。しかし、シャッターチャンスを狙う時間がないので、完璧な撮影とはいかないけど、これはこれでいいだろう。

16時29分に退園。

ふぅー。疲れた。まじで疲れた。もうエクストリーム動物園という感じで、動物園を出てからたっぷり30分は休憩した。教訓。なるべく動物園は時間があるときに、ゆっくり来たほうがいい。

また来た道を戻ると考えるとゲンナリする。そこに釧路市街まで続いていると思われるサイクリングロードを発見。なんだよ、来るときは普通に道路を通ってきたが、隣接してこんな素敵なものがあったとは・・・。

このサイクリングロードは、釧路阿寒自転車道「湿原の夢ロード」と言うらしい。

釧路は北海道では札幌、旭川、函館に次いで4番目に大きな街だが、道都の札幌から遠いこともあって、上位3つの都市より相当寂れている感がある。私は情緒があって釧路が好きなのだが、もし釧路に住むことになっても、どうやって生活の糧を稼いだらよいか、北海道の他の都市以上に想像ができない。こんな素敵なサイクリングロードがあっても利用者は少なくて、釧路の街に着くまで、たった1台しか自転車とすれ違わなかった。

釧路に着いてからはインデアンでカレーを食べた。みよしののカレーなんかとは比較にならないくらい美味しい。

釧路中心部では、くしろ川リバーサイドフェスタ2014というイベントを開催中。

「君は~♪」

10年以上前にラジオで流れていたような歌謡曲。しかし、音程が凄まじい。市民参加のカラオケ大会のようなものが行われていて、街中に凄まじい音量で、お世辞にも上手くはない歌声が響いていた。札幌にも東京にも大阪にも、どこに行くにも遠いという、この釧路ならではの風情を感じる。

MOOにある港の屋台という居酒屋の集まりみたいな場所に行き、以前から気になっていた釧路ラーメンを頼む。40歳代くらいの綺麗な女性が「醤油ラーメンでいい?」と聞き返す。釧路ラーメンにも醤油、味噌、塩とあるらしいが、青森のラーメンみたいのを想像していたので、醤油にする。600円だったかな。

居酒屋なので当然お酒も勧められるが、そんな気分ではなかったので「お冷でいいです」と言うと「あはは」と美人ママ。

釧路のシンボル、幣舞橋の夜景。綺麗な月夜だった。もうテントに戻る気力がなくて、近くのパコで日帰り入浴。仮眠して夜明けを待つことにした。

Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

11日目 青春18切符で最果ての街・根室へ

港町・釧路に朝が訪れた。

この日、自転車はそのへんに放置プレイして、鉄道で最果ての街・根室に行くことにした。自転車のオフ日、わかりやすく言うと休息日である。毎日毎日、自転車に乗っていると、体があちこち痛くなるし、特にケツの痛みは深刻なものとなる。

元々、こういう日を作ろうと思って、1日分だけ残した青春18切符を持ってきていた。何かトラブルがあった時のためにと、お守り的に持っていたのだが、明日で使用期限が切れるので、今日、根室までの往復で使ってしまうことにした。

釧路駅始発の快速はなさきに乗ると、2時間くらいで根室に到着。

札幌からの特急は釧路が終着で、釧路から根室までの区間は特急列車が走っていない。そのため、ローカル線としては例外的に、小奇麗な身なりの旅行者やビジネス客が多い。

ルパン三世のラッピング車両なのは、この沿線が作者の地元だからだ。しかし、同じ時刻の列車でもラッピング車両が割り当てになるかどうかは日によってまちまちで、一般人にはわからない。鉄道マニアはきっと、ラッピング車両に乗るためにマニアの情報網で下調べしてからやって来るはずなのに、何の気なしにノホホンと乗れるのはラッキーなことだろう。

ちなみに、私は青春18きっぷや北海道&東日本パスでほぼ毎シーズン旅をするが、時刻表という電話帳みたいな分厚い本を買ったことが人生で一度もない。基本的に、マニアの方は時刻表を持って旅している。鉄道マニアの中には、時刻表マニアなる人達もいて、時刻表を買わないヤツはけしからん!と仰る方もいる。

しかし、私は頭の中にあらかた必要な路線の時刻表データが入っている。だから、あの分厚い本を必要としないのだ。私は仕事道具でも何でも、本質的なものだけに価値を感じ、モノというもの全般に執着することがあまりない。

典型的な分かれ道。根室は北海道本島の最東端にあたる街で、一般人が行ける日本最東端の街だ。北海道の他の沿岸都市と比べて、すっきりした綺麗な街並みが印象的だ。

根室の名物は花咲ガニと、このエスカロップ。昨年はドリアンという根室で有名な喫茶店でエスカロップを食べたが、定休日なのか時間の問題なのか開いていなかったため、大通りのイーストハーバーホテルのレストランに行った。朝食時間帯には提供していないので、ランチ時間帯まで公園で酒などを飲んで過ごす。

根室のスーパーで朝食用の酒やつまみを選んでいる時、ロシア人っぽい女性に『ここのメンチカツ、すごく美味しいんですよ』と薦められた。試食があったので食べてみたが、ちょっと塩コショウが強いというだけで、普通に美味しいと言うレベルだったから買わなかった。その女性は何枚もメンチカツを買っていた。

根室はいい所だ。綺麗な風が吹いている。

帰りの列車では車窓から沢山のシカを目撃する。一般観光客の中年女性グループが歓声をあげる。

釧路の街に戻ると虹が架かっていた。列車の中でこれからのプランをざっと考えた。私は釧路には何度も来ているが、釧路名物とされる勝手丼だけは食べたことがなかった。

勝手丼とは、釧路駅近くにある和商市場で提供されている海鮮丼の一種である。ご飯を買って、好きな具を乗せて作る、バイキング形式の海鮮丼だ。市場ってあまり好きじゃないんだけど、今日で釧路が最後になるので挑戦してみる。

和商市場=勝手丼というくらいの勢いで、市場には勝手丼を提供している店がいくつもあった。街中にあまり活気のない釧路にあって、意外にも活気のある市場内。市場を一周し、30歳くらいのお兄さんの店で頼むことにした。

今は15時45分くらいで、16時半くらいの列車で茅沼駅まで輪行してキャンプ場へ戻ろうと思った。時間に余裕がないため、持ち帰りにしようと思った。お兄さんに聞くと、向かいの店でご飯だけをまず買うらしい。まだあまりお腹か減っていなかったから、ご飯も具も少な目の構成で頼んだ。合計500円ちょっと。これはうまくやると、300円くらいで新鮮なイクラ丼が食べられるのでは?と思った。

輪行の準備が終わり、列車を待っている間に作成した勝手丼を食べる。これは・・・旨い。今回の旅行中で食べたもので、ベスト5に入る旨さだ。観光客用だから、と侮ってはいけない。ぜんぜんいける、旨い。

そういえば、注文している最中に店のお兄さんと会話を交わした。なんでも、お兄さんは私が住んでいる所の隣町である埼玉県春日部市に7年住んでいて、割と最近、地元の釧路に帰ってきたらしい。時間がなかったので話し込めなかったが、海のない埼玉県で海鮮丼を売る仕事はしてなかっただろうし、考えて、考えて、考え抜いた末の帰郷だったに違いない。

釧網本線で茅沼駅へ向かう。茅沼は結構遠くて、45分くらいかかった。自転車だと釧路市街との間に小さな峠を2くらい越えないとならないから、距離的には30キロくらいだけど、やる気がないときには辛い30キロだ。列車も空いていたし、輪行して正解だ。

キャンプ場の管理もしている、憩の家かや沼。日帰り温泉、売店、レストラン、宿泊施設などもある。ツーリングのライダーも泊まっているようだった。温泉はパコと同じような塩辛く、熱い温泉。450円くらいと安くて設備もそこそこ充実している。家の近所にあれば、頻繁に利用するのに・・・と思った。

温泉から出たら、ここに住んでいると思われる猫が。器用に自分で自動ドアを開けて遊びに来てくれた。

ほとんど鳴かない大人しい猫だった。

私は、湧別で食べたあのホタテフライの味が忘れられなかった。ホタテフライのことしか考えることができなくなっていた。

明日以降、あのホタテフライを食べるために、湧別に戻ることを決意した。