北海道のローカル線における顔となる列車と言えば、1977年(昭和52年)から1982年(昭和57年)という国鉄末期に製造された車両である。
カネのある東京近辺とかだと10年かそこらで新型車両に置き換わるらしいが、田舎の財布事情ではそうはいかず、延命に延命を重ねて40年以上も使用するのが当たり前なのだろう。
むしろ、石北本線や釧網本線のような、首の皮一枚で繋がっているような大赤字の廃止寸前路線だと、線路が朽ち果てて撤去されるまでキハ40が走り続けるものだと思っていたが、2024年3月のダイヤ改正を機に最新鋭車両のH100形に置き換わったのだ。
H100形は相性は側面にデカデカと書かれたDECMO(デクモ)と言う。
H100形はディーゼル・エレクトリック方式
キハ40と言えば典型的なディーゼル気動車。北海道では年齢の高い人を中心に列車全般が気車と呼ばれる傾向があるのもキハ40のイメージからだろう。
それに対して最新型のH100系は、愛称のDECMo、すなわちDiesel Electric Car with MOtors が意味するように、発電用エンジンで主電動機を駆動するディーゼル・エレクトリック方式、すなわち電気式気動車なのである。
クルマのハイブリットカーみたいに蓄電池方式ではないため、加速時にはエンジン音が唸るため、ディーゼルカーとそんなに変わらないが、電車の部品を共用できるのでメンテナンスコスト軽減などができるメリットがあるそうだ。
実際に乗ってみてわかったデメリット
老朽化した化石のようなキハ40に比べるまでもなく、新型の走行安定性はメリットと言えるが、旅行者目線で言うと下記のデメリットが気になった。
進行方向に向かって窓側の席が少ない
ローカル線で道東を一回りすると1回の乗車が3時間越えするのは当たり前だが、座席数が単純に少ないというのがまずある。
席の半分近くがロングシートで、都市部での短距離乗車ならロングシートの方がコスパはよいかもしれないが、JR東日本的な考え方の影響だろう。H100系自体がJR東日本の車両を元にしているというのもあるが、北海道の超ローカル線なら、キハ40系やキハ54形のようなクロスシート主体でよかったのでは。
釧網本線みたいなバリバリ観光路線でロングシートで目の前がトイレの壁で3時間半乗ったのは寂しかった。
それぞれの路線には進行方向の右側が景色が良いとかあるものだが、例えば向かって右側の席を確保しようとすれば、なんとたった3席しかない。
最新型にして信じられない劣化だ。
ドアの開閉が押しボタン式
他の地域では導入されていても、道東地域では初めてのボタン式開閉のため、操作に手間取る地元の人や観光の人もいる。
たった3席しかないべスポジを確保しようにも、自分の前に他の人が並んでいた場合、その人がドアを開けるのに難儀していると、その3秒くらいの遅れのせいでベスポジ確保が難しくなってしまい、最悪、3時間半もトイレの壁を見つめることになってしまう。
クロスシート部分に座れても他人と向い合せ
都市部の通勤電車ではありがちだけど、観光路線で他の観光客と向い合せはお互いにリラックスしづらい。
車窓の写真や動画撮影や、弁当を気兼ねなく食べたりがしづらいのは、観光路線では残念なデメリットであろう。
努力して窓際に座れても日差し攻撃を受ける
日よけやカーテンの類が省略されているため、早朝出発などでは日差し攻撃を長時間受けることになる。
都市部の通勤などの短距離乗車ならともかく、少子高齢化で限界集落一直線な北海道の赤字ローカル線においては、最早、酔狂な観光客に頼るしか生き残る道はないと思うが、長距離乗車の観光客をないがしろにするのは間違っている。
ちなみに、赤道に近い地域の外国では日差しを極端に嫌う外人が多い。外人観光客を誘致する国家なだけに、日よけ省略は国家戦略にも反している。
まとめ 座席配置は地域特性を考慮すべきだった
キハ40でのローカル路線の旅では5人くらいしか乗っていない時は、1人1ボックス使えるので足を伸ばしたり自由だったが、最新車両の代償として自由がなくなってしまったように思う。
最新車両の走行安定性はともかく、座席配置は地域特性を考慮すべきだった。座席も妙に硬いし、背もたれもカチカチ。
線路がなくなるまでか、あと40年はこの車両を使うのだろうけど、時代は儚く、少しずつ、そして急激に変わっていくものだと痛感したのでござる。