Fourth Stage 沖縄本島編

1日目 その1 悪魔の16号線、ふたたび

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自宅のある埼玉県某所からは、自走で成田空港を目指す。このコースは前回の北海道内陸一周編と全く同じだが、わざわざ旅行記として書くのは、この日が全日程で最長走行距離であり、悪夢の始まりだったからだ。

できれば同じ失敗は繰り返したくない。誰でもそうだろう。前回の失敗は距離を甘く見積もったことが原因で、到着時間がギリギリになってしまった。

今回、飛行機が出るのは明日の午前6時きっかり。飛行機は待ってはくれない。空港までは100Kmちょっとある。空港までは市街地を走るので民間人も多く、高速走行には限度がある。余裕に余裕を重ねて、もうアホかというほど余裕を重ねて、前日の午前10時に出発した。飛行機が出るまで、タイムリミットは20時間だ。

私は沖縄の人に「沖縄通」と言われるくらい、沖縄に何度も通った“自称・沖縄通”だ。途中から数えることをしなくなったが、10回以上は通ったと思う。その経験から冬の沖縄の気温は予想できるのだが、寒い日は沖縄の人でも靴下を履くくらい気温が下がる。荷物になり過ぎない範囲で、薄手のジャンパーなどを数種類用意した。

自転車の装備品としては、前回までの経験から、リアキャリアは必要ないと判断し、リュック一つである。キャンプはしないのでテントなどはない。

午前10時過ぎ、自宅を出発する。国道16号線だ。西から東に向かって進んでいるが、ちょうど風が押してくれる。急ぐ必要が全くないが、風が押してくれるので20~25kmくらいをキープして走る。ここ最近はサイクリングロードばかりを走っていたので、市街地はなんとなく疲れる。

しかし、追い風のせいもあって、難なく千葉県へと突入。

時々、北海道の人に「県境ってどんなふうになってるの?」と聞かれることがあるが、埼玉県と千葉県の県境には川が流れている。日本では川とか山とか海みたいな自然をベースにした県境が多いと思うが、市街地に唐突に県境があることも、場所によってはあるだろう。

自宅を出た頃は快晴だった空も、昼下がりには曇天になっていた。風の方向が変わり、小さな水滴のようなものが降ってくる。小雨だ。時間も時間で、お腹が空いてきた。たまたま近くにあった「くるまやラーメン」というチェーン店のラーメン屋に行く。関東とかの国道沿いに時々ある店だ。私は「東京(関東)のラーメンは美味しくない」というイメージがあるので、よく見る割には入ったことはない。

入口で写真付きのメニューを見る。味噌ラーメンがお勧めらしい。613円とそこそこの値段だが、写真を見ると具がモヤシくらいしかない。それがこの店のこだわりなのかもしれない、と信じて味噌ラーメンを頼む。味の好みは人によるので「微妙」としか書けないが、同じ関東にあるチェーン店でも「山岡家」の方が好きだと思った。

埼玉県の国道17号線には、「くるまや」と「山岡家」が隣接している所がある。「くるまや」は交差点にあって立地条件が上なのに、大抵、「山岡家」の方が混んでいる。

自転車を「くるまや」に停めたまま、隣にあったBig-A(コンビニ的な店)に行く。サイクリストの必携アイテム「アルフォート」やノルアルコールビール、みかんを買って、口直しをする。

店を出ると雨が止んだ変わりに、アラレが降っていた。気温が下がり、風が強くなってくる。自転車に戻って走行を再開する。少し走って、後輪に異常を感じる。空気が抜けている・・・パンクじゃないか。

沖縄では道路事情が悪いことや、自転車屋が少ないことを見込んで、出発前に予備チューブを買って持ってきていた。それに加え、前回の自転車旅行の時に北海道美幌町でパンクしたチューブを釧路市で修理したものと、合計2個ある。

パンクでは走れないので、近所に公園がないか探してみる。幸い、近くに公園があった。久しぶりのパンク修理だし、悪天候で正直めんどい・・・。

タイヤを目視で確認しても、何かが刺さったような様子はなかったし、ラーメン屋に停めている間に空気が全部抜けたというのも不自然だ。千葉県は何かと埼玉県と対抗意識を持つので、誰かが嫌がらせで空気を抜いたのではないか? という悪い考えが頭をよぎる。

試しに修理する前に空気を入れてみる。少し走ってみる。・・・意外に問題なさそうだ。行ける。「ぜんぶ千葉のせい」にしながら、そのまま国道16号線を走る。が、1Kmくらい走ると段々空気が抜けてくる。なんとなく、パンクというよりは、バルブ部分の異常に思える。バルブがおかしくなって、空気が抜けているのではないか。

この感じで1kmごとに空気を入れていると、空港到着まであと50回くらいは空気をシコシコ入れないとならない。暗くならないうちに、修理をしなくては。団地みたいな大きな建物脇にある、寂れた感じの公園を見つけた。修理をしよう。しかし、関東とは言え、強風でとても寒い。荷物の都合で沖縄仕様の薄手の格好なので、走行している時はともかく、下車しているとものすごく寒い。

手もかじかむ。半年ぶりのパンク修理なので、自分でも笑えるほど手際が悪い。あれ、どういう順番でやるんだっけ・・・。なんとかチューブは取り出せたものの、変わりのチューブを入れるのに手間取る。うまく入らない。イライラする。団地から子供連れの家族が出てきて、公園で騒ぎ出した。冷たい風を全身に浴びる。

うーん。15分くらい色々やってみるが、手が悴んだせいか、寒くてタイヤが固くなってるせいか、チューブが本当にうまく入らない。なんでー。サイズが間違っているんじゃないか? と確認するが間違ってはいないようだ。公園の掃除係の人が来る。17時半。冬なのでかなり暗くなる。まだ飛行機の時間まで13時間あるから良いが、これが夜中とかだったらアウトだ。少し歩けば北総線の小室駅があるので、面倒だし輪行してしまおうか。

沖縄に行って、明日の朝、明るくて暖かいところでやれば、必ず直せるはず。それとも、ホームセンターの看板がさっき近くにあったから、探してそこでやってもらおうか・・・。

暗くなってしまったので、とりあえず自転車を押してアルフォートを食いながら、小室駅方面へ向かう。このあたりの北総線沿いは、ニュータウンとして開発された地域で北海道みたいに人工的な街並みである。嫌いじゃない。

いま使っているチューブだって自分で装着したのだから、落ち着いてやれば必ずできる。しかし、暗闇では作業できないので、小室駅近辺で作業できそうな場所を一応探す。駅で輪行する場合を考えて、小室駅内で時刻表を確認する。

ん? 成田空港行の列車は小室駅には停車しないようだ。隣の千葉ニュータウン中央駅なら停まるので、とりあえず、隣まで移動した方が何かと良さそうだ。あそこには大きいイオンがあったはず。

自転車を押して、アルフォートを食いながら千葉ニュータウン中央駅を目指す。

その2に続く

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