
画像はHDDの分解イメージ
結論から言うと、従来のCMR方式と比べて大容量なのに安いSMR方式のHDDは、通常のPCデータのバックアップ用途で使うと「フリーズした?」「故障した?」と疑うほどに遅くなる。
これはフリーズや故障ではなく、SMR方式の仕様上、必ずそうなるようにできている。
ここではSMRのメリット、デメリット、そして実際にバックアップで使ったときの地獄の挙動をまとめる。
目次
SMR方式とは一体何か
SMR(Shingled Magnetic Recording)は、HDDのトラックを瓦屋根のように重ねて記録密度を上げる方式であり、メーカーにとっては同じコストでより大容量を実現できる魅力的な技術だ。
SSDが一昔前のHDD並みに大容量化した現在、HDDはより低価格になることを運命づけられているが、このために開発された技術だとも言える。
しかし、その瓦屋根のようにデータを記録する仕組みのせいで、一部のデータを書き換えるだけでも周囲のトラックまで書き直しが必要になり、これがフリーズしたかと思うほどの異常な遅さの原因になる場合がある。
SMRのメリット
SMRの最大の利点は大容量だけど安いという点に尽きる。
従来のCMR方式と比べて数千円単位で安くなることも珍しくなく、コスパだけ見れば非常に優秀だ。また、読み込み速度はCMRとほぼ変わらず、動画視聴やアーカイブ用途では性能差を感じることはほとんどない。
さらに低消費電力で静かという特徴もあり、これらの利点はSMRのコスパやSMRの読み込み性能を見るとより具体的に理解できる。
SMRの恐ろしいデメリット
しかし、SMRの弱点はそのメリットをすべて吹き飛ばすほど強烈だ。
最大の問題はランダム書き込みが壊滅的に遅いこと。瓦屋根方式のせいで一部を書き換えるだけでも周囲のトラックまで書き直しが必要になるため、書き込み性能が状況によって極端に低くなる。
キャッシュを使い切ると地獄モードに突入
SMR方式のHDDは書き込みの遅さを隠すために数十GB規模の特別なキャッシュ領域を持つ。これは一般的なHDDのDRAMキャッシュ(数十〜数百MB)とは別物で、プラッタ上にCMR方式の高速領域を確保しておくというものである。
Seagateの代表的なSMRモデルには23GB程度のディスクキャッシュ領域があるという複数のユーザーによる検証結果があるが、メーカーや機種によってはもっと小さい。この領域に書き込んでおいて、HDDが暇な時に後から再配置するという仕組みなっているのだ。
だが、このキャッシュが枯渇した瞬間に書き込み速度は0〜10MB/sまで落ち込み、Finderやエクスプローラーが固まったように見えるほど挙動が不安定になる。大量のテキスト系データや、写真、音楽などの小容量のデータを別のドライブから一気に丸ごとバックアップするような作業では、ほぼ確実にこの症状が発生する。
これはOS標準機能でもサードパーティーのデータコピー高速化ツールを使おうが変わらず、HDDのアクセスランプだけが常時点灯し、1TBのコピーに半日以上かかることも珍しくない。
実際に経験したが、データコピーしながら別の作業をしていたところ、ブラウザが固まったり、最終的にはOSごと固まって反応しなくなってしまい、再起動を強いられたこともある。
SMRに向いている用途
SMRは全てが悪いわけではなく、用途によって向き不向きがあるだけだ。
書き込み頻度が低い読み出し中心の用途、例えば動画アーカイブや、長期保存のデータ置き場としては、コスパに優れたHDDである。
SMRはデータ置き場としては優秀だが、定期バックアップ用途では地獄という、使う人間に割り切りが必要なHDDだ。
細かなデータの頻繁な大量書き込みや定期バックアップ用途ではCMRを選ぶべきであり、SMRを使うのは後悔のもとになる。








