沖縄本島

Fourth Stage 沖縄本島編

3日目 もしもし海洋博公園

目覚めるとホテルだった。ホテルに泊まったのだから、当たり前と言えば当たり前だ。久しぶりにきちんと眠ったからか、頭がスッキリとしていた。人間、休息が大事だ。

窓の外を見ると、普段見慣れない景色だった。ここはみどり街という名護の昔ながらの飲み屋街で、小さいスナックや飲食店などが沢山ある。個人的には、宮古島の繁華街を彷彿とさせる。

天気が良いと海の色が冴えて見える。真冬の海でも、こんなに青い。日中は25度近い。日差しが当たると、体感気温30度。

ある意味、人を惑わす作りの看板。どっちからでも行けるという意味ではあるけど、優柔不断の人は選べないよー。

左折して国道449号線に進む。歩道も車道も自転車には優しくはない。美ら海水族館行きのレンタカーが多い。

しばらくしてバイパスと合流すると、立派な観光地っぽい道路になる。

せっかくなので、瀬底島(せそこじま)に寄り道する。元々は離島苦に悩まされる島だったが、瀬底大橋ができてからは簡単に行き来できるようになった。夏は観光客が多いらしい。

瀬底島から沖縄本島を眺める。

沖縄本島に戻り、イオン系列のスーパー「ザ・ビッグ」で昼食を買って軽く食事。天ぷらとアルフォートなどのお菓子、ルートビア。沖縄の天ぷらは本土の物より衣が分厚くて『おやつ』扱い。具は魚とかウズラの卵とか。

近所に住む猫が器用にテトラポットの上にやってきた。沖縄の野良ネコには子猫も多い。やんばるまで那覇からペットを捨てに来る人が多いという。

海洋博公園へと続く道。日本そば屋の看板。沖縄で「そば」って言ったら「沖縄そば」なので、日本そば屋は珍しい。ここと空港くらいでしか見たことがない。

海洋博公園に到着。沖縄観光で有名な美ら海水族館、蝶々園などのいくつかの施設がある。海洋博公園自体は無料で出入り自由。

美ら海水族館。昔、一度だけ入ったことがある。沖縄に初めて来るパックツアーの人や、台湾人や韓国人の観光客は大体の人が行くと思う。年間パスポートは2回来たら元が取れる良心価格。だが、近所に住んでなかったら、ここまで来るのが結構大変。

初めて美ら海水族館に行った時、すごくがっかりしたのが、実は出入り自由の海洋博公園内にウミガメなどが観察できる見学無料の大型水槽があるということ。個人的には沖縄3大がっかりの一つ。

無料でウミガメが観察できるのは、日本広しと言えど沖縄くらいだと思う。埼玉の某公園はフラミンゴが無料。北海道はエゾシカとかキタキツネが、そのへんにいて無料。

ウミガメだけでなく、イルカショーも無料で見れる。もう一度整理すると、美ら海水族館に入場してもしなくても、これらの施設が誰でも出入り自由の無料エリアにある。

イルカも見れたし、そろそろ帰ろうかな~とルンルン気分で駐輪場へ戻ると、なぜだか自転車がいっぱい。繁殖しとる。沖縄サイクリストの定番立ち寄り場なのかもしれない。埼玉で言えば、榎本牧場みたいなものだろうか。

いよいよ右ひざの痛みが尋常じゃなくなってきた。このまま来た道を戻れば最短距離で名護まで帰れる。でも、せっかくだから時間をかけてでも今帰仁村経由で名護まで戻ってみようと思った。自転車を押して歩いてみる。なんとか行けそうだ・・・。行けるのかな?

なきじんの観光名所、ダチョウらんど。通りかかっただけだが、ダチョウ卵の目玉焼きは7000円らしい。正直、こういう所で暮らしてみたい。

足が痛むので今帰仁村のAコープにて、しばし食事休憩。太陽が熱い。夏だ。子供のころの、夏休みの一番暑かった日の午後を想像してほしい。ちんすこうアイスと、ノンアルコールビールで乾杯。

北海道のAコープもお勧めだが、沖縄のAコープも素晴らしい。なんてったって、惣菜が素晴らしい。ここで700円くらい、惣菜などでお金を使った。

やんばるで、名護より北で、市町村で言うところの村だから、もっと田舎っぽい風景を想像していた。しかし、普通に政令指定都市の住宅街くらいの感じの風景が続く。北海道の村だったら、もっともっと何もないよー。保証する。

再び海が見える風景となる。羽地内海(はねじないかい)、沖縄の瀬戸内海などと言われる海だ。

補給食のアルフォート。カロリーメイトはあまり好きじゃないので。アルフォートの値段は首都圏も沖縄もそんなに変わらない。企業努力だな。

名護へと戻るルート。日差しもキツいが、それ以上に膝がキツい。

名護市街地に何とか帰って来た。今日は無理してしまったかもしれない。

ここは名護十字街という場所だ。バイパスが出来るまでは国道扱いだったので、今よりもっと賑わっていたらしい。那覇なんかメじゃなかったという。新潟とか本州の雪国によくある片屋根式アーケードがある。

みどり街の飲み屋街。明るい時間にこうして見ると、妙にカラフルな色使いだと思う。日本の街並みっぽくなくて良い。それとスナック『ニューパンティー』という店名は、那覇の『きまぐれポニーテール』に匹敵するネーミングセンスだ。

昨日宿泊した名護キャッスルホテル。明るい時間に見ると、より古城っぽさがある。沖縄的に言えば、グスクという感じだ。誤解がないように言うと、リクルート社が運営する予約サイトに掲載されているくらいなので、きちんとしたホテルだ。ネットで予約できる名護のホテルとしては、おそらく一番リーズナブル。

ここ以外でやんばるで安い宿というと、民宿とネットカフェ(宿ではないが)しかないので、名護で安ホテルを探している人にはお勧め。

名護市営市場。飲食店や菓子屋などが入っている。しかし、空きテナントもあり、結構厳しいようだ。2011年にリニューアルしたが、元になった市場は明治時代からある。都会らしさと沖縄らしさが融合したジョートーな建物だと思うが、地元での評価はイマイチ。

沖縄の各所では自治体ベースでの再開発建築物が増えているが、大体評価が良くない。建物によっては、テナントが全然入らなくて、これ維持するのに税金いくら払ってるのー、と建物を見るたびに怒り出す人もいるという。北海道の田舎だと、先立つお金がないからか再開発自体がされないけども。

近所のサンエーで買った握り寿司。わさび抜きじゃない方が良かったが、半額だったし、あとで付ければいいと思った。

元々、沖縄に握り寿司ってあったのだろうか。見た感じ本土と同じだから、沖縄文化では多分ないだろうと思う。サンマを唐揚げにして食べる土地だ。沖縄では寿司はあまり人気がないのだという。北海道だと寿司が半額になったら2秒で売り切れるが、沖縄では道理で売れ残っていたわけだ。でも人気がない割には、沢山製造はされている。供給過多?

付いてきた練りワサビは北海道網走市、醤油は群馬県の会社のものだった。網走は生まれ故郷の近所だし、群馬は今住んでいる所の近所。なんというか、自転車で回っておいてなんだが、日本は狭い・・・ような気がしないでもない。

この日は名護市内の某ネットカフェを利用する。右膝はさっきのスーパーで買っておいたサロンパスで応急処置。サロンパスって靭帯損傷にも効くんだろうか・・・。今日は半分くらいは自転車を押して歩いた。あぁ、那覇、いや埼玉までこんな足で無事に帰れるだろうか・・・。無理じゃないの。

Fourth Stage 沖縄本島編

2日目 その2 やんばる(本島北部)へと旅は続く

頭痛薬を飲み、右膝の痛みに不安を覚えながらも、ゆっくりペースで国道58号線を北上する。このあたりは米軍の嘉手納基地の間を国道が通っていく。元々は米軍用の道路として作られたそうだ。頭上に戦闘機が爆音と共に飛び交う。

沖縄に何度も来ているので、最近はあまり気にならなくなったが、沖縄を走っている車の多くは中古車だ。本土で酷使された車が沖縄で売られている。北海道だと転勤とかで「品川」とか道外ナンバーをたまに見かける。彼らは内地風(※)を吹かしたいらしく、いつまでも「品川」ナンバーなのだが、沖縄だと県外ナンバーは滅多に見ない。沖縄ナンバーの方が車検が安くなるからだそうだ。

※北海道では本州のことを内地と言う。沖縄では北海道、本州、四国、九州のことを内地や本土と言う。

嘉手納町を抜けて読谷村に入る。天下の58号線沿いも、グッと島の落ち着いた雰囲気になる。夏だと歩道に国の天然記念物であるオカヤドカリがいて感動することがある。オカヤドカリは本土のペットショップなどで売られていることもあるが、天然記念物なので観光客が無許可で捕獲してはいけない。

恩納村に近づくにつれて「わ」ナンバーのレンタカーが増える。リゾート色が強くなる。沖縄の桜は1月~2月頃に咲く。冬の日中の気温は20度前後と初夏の北海道並に走りやすいが、それほどサイクリストは多くない。ここまで2人くらいしか見かけなかった。

沖縄は車道の路側帯が狭いのと、大型トラックや観光バスが多いので歩道を走行した方が安全だと思う。歩いている人は滅多にいないし、沖縄の歩道は大抵広い。広いせいで、駐車場として使われている場合も結構あるのだけど。

海が見えてくると恩納村だ。恩納村は1975年の沖縄海洋博の頃に開発されたリゾート地帯だ。リゾートホテルや別荘のような建物が多い。このあたりから北の沖縄本島は「やんばる」と呼ばれていて、自然などが多く残されている。中心都市は名護市で、やんばる全体の人口は約12万人。沖縄本島自体は、那覇市を中心とした南部に人が集中している。

恩納の道の駅付近。道幅も広く、走りやすい。リゾートホテルの多い区間で、那覇からの路線バスも多い。基本的に、那覇から北に向かう時は登り坂となる。以前より自転車の写真が増えたのは、北から南まで一緒だったせいで、物に愛情を抱かない私でも少し愛着が湧いたから。沖縄県内で累計走行距離が8,000キロを超えた。日本一周はコースによるが、多分7,000~8,000キロくらい。

明るいうちに名護まで着いているのが本日の理想。というか希望。恩納のリゾート地帯を抜けて、さらに北へと進んでいく。

木の実が路上に沢山落ちていている。この木の実は、沖縄の色々な所にある。避けながら進んでいく。「毒があるので食べてはいけません!」という張り紙をたまに見る・・・。いい年した大人だったら、美味しい木の実がそのへんに転がってる可能性が低いことは、常識的にわかると思うが。国道沿いの小さな公園でトイレ+小休止を挟む。

休んでいると、50代後半くらいの自転車旅のオジさんが話しかけてきた。私は自転車旅で他の自転車旅の人と話すことは滅多にない。同類嫌悪というわけじゃないが、民宿やライダーハウスの類をまず絶対利用しないので、まとまった時間、彼らと接する場がないからである。輪行は飛行機か新幹線だし、八戸から北海道までフェリーに乗った時(2nd Stage 埼玉~東北~北海道編参照)は、周りは全員、定年退職の年金生活者だった。

オジさんは今朝、北海道の新千歳空港から福岡経由で那覇に来たらしい。福岡出身でサラブレッドに惹かれて、現在は北海道の日高地方に住んでいるという。日高は牧場だらけの場所で、JR日高本線の車窓は馬だらけだ。馬が好きな人には堪らないだろう。

オジさんは去年の8月に北海道を自転車で走ったという。夏場の北海道は自転車旅行をするために、夏休みの学生や正体不明のオジさんなど、色々な人達が全国から集まってくる。今日は夏みたいに暑いのに全然サイクリストがいないね、という当たり障りない話をしてオジさんと別れた。平日だから当たり前だろう、と内心思った。日が沈むまで話が終わりそうになかったので、早く切り上げねば、とも思った。オジさんは3日間で沖縄本島を一周して、石垣島に向かうという。

オジさんはそういうタイプではなかったが、どうも50代後半や60歳前後くらいの人には警戒心を持ってしまう。ちょうど親子くらい歳が離れているので、その年代の人は自分の子供に説教をしているつもりで、他人にまで説教をする傾向があるように思ってしまうからだ。

遠くに見えるのが名護の街。全然興味がないが、名護には北海道の某プロ野球チームが冬期間キャンプに来る。というか、日本のプロ野球チームの大半が沖縄でキャンプするらしい。キャンプって、バーベキューとかやるアレかなと思うと楽しそうだけど、実際どんなことをしているかまでは全くわからない。多分、野球の練習だろう。

夕暮れ時の名護湾。日中は暖かい冬の沖縄も、日が沈むと気温が下がり、寒暖の差が激しい。単純に景色だけで言うと、北海道より沖縄の方が山あり、海あり、街ありでエキサイティング。北海道も島ではあるが、沖縄の方が18倍くらいは島って感じがする。

北海道は大陸的で、自転車だと同じ景色が最低6時間は続く。

それに比べたら、沖縄自転車旅は走馬灯のようだ。走馬灯って死ぬ時に見るアレで、どんどん景色が変わっていく。刹那的でさえある。

北海道と沖縄は戦ってきた歴史がある。というか、一方的に北海道が「海しかない(失礼)沖縄に負けるはずがない」と観光客誘致に熱くなっている。自分の知る限りでは、沖縄が北海道を観光でライバル視している話は、あまり聞いたことがないが・・・。

沖縄自動車道の名護側の許田インター付近。沖縄自動車道は那覇と名護を結んでいる高速道路。名護側が起点。

国道58号線も実際は鹿児島県が起点で、種子島、奄美大島を海上で経由して、北から南へ沖縄本島を那覇まで縦断している。海上部分を含めると日本最長の国道だ。ゴッパチとかゴーヤとも言う。

名護湾に沈んでいく夕日。

日が沈んでしまったので、なにはともあれ、かねひでで買って海岸で夕食。寒くて手が凍える。ミートスパゲッティー238円はボリューム満点。かねひでに限らないが、沖縄のスーパーの惣菜は、お得感あるものと、そうでないように思えるものの差が激しい。

騙し騙しここまで漕いできたが、右膝が結構痛い。100が最大なら、70超えだ。名護中心部までは5Kmくらいだから、しばらくは寒いし自転車を押して歩こうか。

名護まで来たのは多分、人生で3回目だと思う。初めて来たのが2005年で、2回目が2009年だった。那覇からバスで来ると片道1800円くらいかかったと思う。交通費のかかる北海道でさえ、札幌-旭川間(約120Km)の高速バスが片道2000円なので、沖縄のバス代は少々高いと言わざるを得ない。

でも、沖縄のバスは他県のバスより楽しい。客が少ないと運転手さんが世間話を振ってくるし、バス停がないところでも人を拾ったりする様はタクシー顔負け。タクシーもタクシーで、目が合うだけでも止まってくれるし、自転車押してても乗車を誘われる。レンタカーでしか沖縄を回ったことがない人は、バス旅も薦めます。

名護には全国チェーンのネットカフェが1軒だけある。那覇はホテルが過剰にあるので価格競争で激しく、特に冬は軒並み安いが、名護のホテルは高い。那覇は1泊3000円前後が相場だが、名護は6000円前後が相場だ。

この日、初めはネットカフェを利用しようと思っていたが、ローソンの無料Wifiを利用してスマホで調べたら3980円でホテルがあった。名護で3980円は相当安い。たまたまその宿泊サイトのポイントが溜まっていたので、さらに安く泊まれる。膝も心配だし、昨日からまともに眠っていないので、この日はホテルに宿泊することにした。

キャッスルという名のホテルだが、外観や設備は古城と言った感じだ。しかし、物は考えようで、本土のホテルと比較するとそう思えるだけで、アジアの安宿とかだと思えば、全く何ともない不思議。マックスバリューでポークなどのうちなー弁当を買って食べて寝る。

ちなみに、このホテルは地元では幽霊が出るという噂があるらしい。沖縄は死後の世界と密接に繋がっていて、地球で最もこの世とあの世がリンクしている場所であり、ユタがどうのこうの・・・という話を78回くらい沖縄本で読んだことがあるので、幽霊の噂なんて乙女チックなものが沖縄にもあるというのは意外だ。

Fourth Stage 沖縄本島編

2日目 その1 とりあえず、北谷かどっかまで

午前9時半頃、沖縄・那覇空港に到着する。沖縄を訪れるのは約2年ぶりだ。10何回目かの沖縄アイランド。ピーク時には年に3回も沖縄に来ていたことを考えると、空白の2年間だったと言える。意識して沖縄から遠ざかっていたのだ。今回の旅の目的の一つは、格好よく言えば、過去の自分との再会だ。

自転車を受け取り、空港を出て組み立てる。外国だとスーツケースとかと一緒に『グルグル回転するやつ』に載せられて出てきたり、ぶん投げられたりするらしい(?)が、ジェットスターの国内線では、北海道でも沖縄でも、大抵ガタイのいいお兄さんが直接運んできてくれる。

那覇空港からは沖縄県唯一の軌道系交通として「ゆいレール」という名称のモノレールが出ている。観光客集まる「国際通り」近くを経由して、やはり観光客集まる首里までを結んでいる。

首里は元々は首里市という独立した街で、琉球王国時代に偉い人が住んでいた所だ。関西地方で言えば、那覇は大阪、首里は京都だ。住んでいる人の気質も異なると言われる。

首里の人は、無理して北海道に例えれば、東京にいる札幌出身の人だ。札幌の人は「どこ出身?」と言っても「北海道」とは言わないで、なぜか「札幌出身です」と言う。首里の人も那覇じゃなくて「首里」と言う。

沖縄県内のスーパーや、ほっともっとなどの弁当屋は24時間営業しているところも多いが、ゆいレールは24時間営業ではないので注意。ちなみに戦前は沖縄にも多くの鉄道路線があったが、戦争でなくなってしまった。自分が鉄道関係の偉い人だったら、北海道の赤字路線をやめてでも、沖縄に鉄道を作りたい。北海道新幹線も函館まで開業して本州と行き来しやすくなれば、それで十分な気がする。どうせ札幌まででは道北や道東の人は恩恵を受けにくいし、「うちなータイム」ならぬ「道民タイム」が壊されてしまう。

写真は日本最南端の鉄道駅、赤嶺駅。近くには沖縄ローカルのスーパー「ユニオン」がある。沖縄にはサンエー、かねひで、りうぼうなどのローカルスーパーがある。他に内地資本のイオン、マックスバリューもある。内地色が強いと受け入れられないからか、内地資本の企業は「イオン琉球株式会社」「株式会社ローソン沖縄」などと沖縄を意識した社名で子会社として営業していることが多い。サンエーではローソンのPB商品のレトルト食品などを扱っている。沖縄の吉野家にはタコライスがある。

那覇空港の近くにはレンタカー屋が沢山ある。3泊4日くらいのパック旅行で沖縄に来た家族連れとかは、大抵レンタカーを使う。空港からレンタカー屋のマイクロバスで店舗に移動する形式が多い。那覇市内に宿泊する人はゆいレールで、北谷や恩納、コザ、名護方面に向かう人はバスを使う。那覇市内中心部(国際通りあたり)までは歩いても1時間くらいなので、荷物が少ない人は歩いても楽しいと思う。ほとんど歩いていく人はいないが・・・。ゆいレール沿いに歩いてもいいが、空港北側の道路を歩いた方が街には近い。

今回は自転車があるので、当然自転車を使う。沖縄の人は自転車に乗る習慣があまりないので、いわゆるママチャリに乗っている人はほとんどいない。県内で自転車やトライアスロンなどの大会があるので、スポーツ自転車に乗ってる人をたまに見かける程度。よって、街中の自転車屋はとても少ない。那覇や名護などにスポーツ自転車メインの自転車が数店舗あるが、ママチャリをメインとして自転車屋はほとんど見ない。

イオンやホームセンターの自転車コーナーをあてにしてもいいが、本土でさえ、そういう店には整備士がいない場合があるので、どこまでに頼りにしていいかわからない。沖縄のイオンの自転車コーナーを回ったが、700サイズの仏式バルブという、スポーツ車では極めて一般的なチューブを扱っていなかった。沖縄に行く場合は本土で多めに買っていった方がいい。

文化とか気候とか人間とか色々な面で、東京と北海道は実はそれほど違いがないが、東京と沖縄の違いは大きいように思う。

かねひでで買い物して朝ごはん。タコライス、ちんすこう、ドラム(フライドチキン)、ルートビア。

ルートビアは沖縄独自の飲み物と誤解している人がたまにいるが、別に沖縄の飲み物というわけではない。欧米やアジアなどの大抵の国でコーラと同じくらいどこの店にも売っている、全人類的な飲み物である。映画のタイタニックにも「ルートビアでも飲まないか?」という台詞があった気がする。海外だと1.5Lのペットボトルとかも売っている。日本では沖縄以外では輸入食料品店くらいでしか買えない。ドクターペッパーに似ていると言う人もいるが、私はドクターペッパーとはかなり別物だと思う。

北海道にもガラナというブラジルのコーラ風の飲み物がある。昔、北海道にはコーラがなかったので、先回りしてガラナが普及したらしい。コーラが北海道に入ってきたのはガラナから遅れること3年。私はガラナにはそれほど思い入れがない。

なんみんビーチ。ガイドブックには波の上ビーチと書いてあるビーチのこと。海に囲まれた沖縄も、那覇市内では唯一のビーチがここ。東京とか横浜みたいに、海岸は橋だらけで、これがビーチと言えるかよ、という状態に。誰もいないのは冬だからで、夏だと多少は人がいる。

なんみんのすぐ近くはラブホテル街で、40軒くらいソープランドもある。自動車学校もあって、本当か知らないが、沖縄出身の人が言うには路上試験のコースがそのラブホテル街なのだとか。ちゃんぷるー(ごちゃまぜという意味)文化らしく、小学校低学年の子供がラブホテル街でボール遊びをしていた。

写真中央付近にあるのがホテル「きまぐれポニーテール」。ここ2年くらいの間に看板が変わってしまった。昔のポニーテールの女の子の看板の方がよかった。「きまぐれポニーテールの角を右に曲がって」などと教習をやるのだろうか。

私は札幌で自動車免許を取ったが、雪国で免許を取るんだったら、絶対に雪のある季節に通った方がいい。雪のない季節に免許を取ったので、怖くて雪道なんて運転できそうもない。沖縄の人も、信号がほとんどないような離島で免許をノホホンと取ってしまうと、本島に来て運転する時に大変らしいが。

市街地を避けて、橋の上を通って北に向かっていく。自転車人口の少ない沖縄にもサイクリングロードがあるが、都市間移動に適したものではない。那覇市街を抜けたら沖縄の大動脈・国道58号線に入る予定だ。なんかやっぱり、自転車を漕ぐと右膝が痛む。昨日の痛みは気のせいではなかったようだ。不安だ。膝に負担がかからないようにギアを調整しながら走る。サイクリストにとって膝は命だ。

国道58号線の立派な交差点。今いる所が那覇市で、向こう側が浦添市。東京と埼玉、いや札幌と小樽、または札幌と江別と言ったところだ。このあたりの通勤時間帯の交通量は、東京、大阪など本土の大都市と同じレベルだという。ぜんぶ電車交通がないせいだ。

58号線沿いにある沖縄の某理髪店チェーンは、平日大人700円。本土で700円の理髪店はそうはないなー。あっても怖くて行きたくないけど。沖縄の最低賃金は現在、時給664円だ。以前は北海道の最低賃金も630円くらいだったが、今は734円にまでアップしている。この金額、北関東3県や、福岡県、広島県などよりも高い。エラい人が最低賃金をどうやって決めているのかは知らないが、北海道は冬は暖房費がかかるし、隣町まで何十キロも離れていて他県より交通費がかかるから、そのあたりを考慮しているんだろうか。

北海道の物価はイメージほど安くない。ジンギスカンの肉は本州よりかなり安いが・・・。北海道は正社員でも15万円前後の給与の会社が多いのに、なぜか北海道民の平均給与が割と高いのは、自衛官など国家公務員が押し上げているためだ。北海道は日本最北端のうえ、国土の4分の1もの面接があるため、自衛隊の駐屯地が沢山ある・・・。

58号線の宜野湾バイパス。市街地の混雑を避けつつ、海を見ながら走りたいなら、迷わずバイパスだ。快適な沖縄サイクリングのツボは、ずばりバイパスにある。那覇、浦添、宜野湾くらいまでは街が連続的に続いている。意識していないと、違う街になったことがわからないくらい。

国道58号線は米軍の軍用道路として作られたが、このエリアの旧道に相当するのは、東側を走る県道251号線、パイプライン通りである。その名の通り、かつては米軍基地へのジェット燃料輸送のためにパイプラインが通っていた。元々、車などの走行を想定していない道路なので、歴史めぐりをするなら徒歩で行くのがよい。

浦添は那覇のベッドタウンという雰囲気だが、しっかり“基地の街”でもある。沖縄に何度も通っていても余所者には掴みどころがわかりにくい街だが、屋冨祖交差点のあたりが繁華街である。

宜野湾くらいまで来ると、釣りスポットやジョギングコースなどが満載。海っぽい雰囲気になってくる。そんなことを思う平日の昼間。沖縄に住むんだったら、こういう所まで散歩して来れるような場所がいいな。

ユニオンで買ってランチ。沖縄のカツ丼は、本土のものより具が豪華。店によるが、人参、ピーマン、玉ねぎなど野菜が沢山入っている。奥にあるアイスティーは、実際に那覇にある食堂をモデルとしているらしい。私の行きつけの食堂もそうだが、沖縄の食堂ではアイスティーが飲み放題になっていることが多い。

沖縄の食堂は本土の食堂とは色々な面で異なる。大抵、Aランチ、Bランチ、Cランチというメニューがあるが、Aが一番豪華。ランチとあるが実際はいつでも注文できる。なんとかチャンプルーとか、沖縄そばなど沖縄系の食事は大抵扱っているが、個人的には食堂ではラーメンは頼まない方がいいと思う。・・・インスタントラーメンの場合があるので。

アラハビーチ。米軍基地がすぐそばにあるので、アメリカ人も多く、金髪の女性がランニングしていたりする。那覇の国際通りなんかより、ずっと国際的だ。米ドルで買い物ができる店もある。遠くに見える観覧車や高層ホテルなどは、北谷町の美浜タウンリゾート・アメリカンビレッジ。地元の人と観光客で半々くらい。いつも賑わっていて、明るい雰囲気。

外人が多いエリアであることは触れたが、外人専用のバーや飲食店も多い。「ここは日本なんだから、日本人お断りなんて有り得ない、俺様が絶対許さん!」などと粋がっても、ホントにガタイのいい外人ばかりで、雰囲気的に絶対入れないような店もある。噂では、金髪ダンサーが躍るストリップ劇場もあるとかないとか。

昨日100Km走って、空港からここまで20Kmくらい。疲れたので、自転車を降りて少し休憩する。物思いにふける。

右膝の痛みが気になる。膝を伸ばしたり曲げたりすると、激痛というほどではないが、にぶい痛みが走る。靭帯を損傷すると自転車なんてまともに乗れなくなる。自転車どころか、歩行すらままならなくなり、日常生活にも支障が出る。

同じ場所を5年くらい前にも損傷したことがある。寒い冬の日の朝方だった。栃木県宇都宮市からの帰りで、はじめは小さな痛みだったが、気にせず走り続けていたら激痛となった。自転車を放棄して電車で帰ればよかったのだが、無理して乗ってしまった。そして、階段の上り下りがまともにできない状態が1か月も続いた。

新潟や東北、北海道を走って、今は沖縄にいる。自転車を辞めるべきか。自転車を辞めて、人間も辞める・・・が正解だ。

私は普段、煙草を吸わない。吸わないどころか、かなりの嫌煙家だ。自宅近くのコンビニに灰皿が設置されているせいで、自宅近くまで煙草の煙が漂ってくるから、なんとかしろ! と軽く苦情を入れたこともある。体に悪いことを承知で、高い金を出して煙草を吸っている人を理解できない。煙草を吸っている人を「ダメな人」と決めつけてしまう時すらある。

そんな私が、なぜか煙草を吸いたくなった。「ダメな人」になってしまおうと思ったからだ。近くのイオンで煙草とライターを買う。20歳くらいの頃に煙草を吸っていた時期が少しある。その頃は1箱250円くらいだったと思うが、今は410円もする。自販機ではタスポというカードがないと買えない。ライターはCR、チャイルドロックという子供のいたずらを防ぐ構造になっていて、相当な力を加えないと着火できないようになっている。最初、このライター固くておかしいんじゃないの? と思った。煙草のパッケージには「ガンになりますよ」的な警告文が昔よりデカデカと書かれている。

煙草を数本吸ってみる。美味しいとも何とも思わないが、舌先がヒリヒリする。喉が痛い。そして、激しい頭痛が襲う・・・。体がダルい。やはり、煙草は人体に有害だったのだ。ふんだりけったり。

その2に続く