一関

Second Stage 埼玉~東北~北海道編

4日目 その2 北上の夜へと沈みゆく

岩手県は広い。北海道を除けば、日本で一番広いのが岩手県だ。本州では圧倒的な広さなのが岩手県である。

今回の旅では立ち寄らなかったが、岩手県の遠野市ではジンギスカンが日常的に食べられていると言う。遠野市の近辺でもジンギスカンが売られている。ジンギスカンなんて、北海道限定の田舎のローカルフードだと20年くらい思っていた。だから、文明の進んだ(?)本州でも、ジンギスカンが日常的に食べられている地域があるなんて知った時は、まさに晴天の霹靂であった。

岩手県以外にも長野県の一部でもジンギスカンが食べられているという。ジンギスカンにも色々あるが、遠野市のは札幌近辺でよく食べられているタレを後付けで食べる方式のジンギスカン。道東(最近は、ひがし北海道などと言われているが、西東京市みたいでしっくりこないネ)や道北で一般的な漬け込み式のジンギスカンは、やはり北海道限定なのだろう。

そんなことを考えながら、一関市から北上(きたかみ)へと北上(ほくじょう)する。

このあたりの国道4号線沿いは、元気な農村地帯という感じがする。北海道の寂れた農村部みたいな雰囲気はなくて、田舎だが概して雰囲気は明るい。農機具の無人中古販売コーナーが目立つようになる。

今日の宿泊地は北上市だ。盛岡市の南50Kmくらいの街だが、北上がどんなところなのかを一言で説明するのは難しい。Wikipediaで調べても「典型的な農業地帯だった」「企業誘致」「学生の街」などのキーワードが見つかるが、岩手県で5番目に大きい街である。

市街地の南側にオフィスアルカディアという場所がある。これが正式名では北上産業業務団地というもので、今回の宿泊地もその団地内のホテルである。イメージ的には、東京などの本社の人間がここにしばらく送り込まれて研修を受けたりするのだろう。ホテル内にも研修施設があったり、長期滞在プランなどがあった。

オフィスアルカディアにあるフラワーホテルに宿泊。

他の地域ではあまり聞かない言葉だが、岩手では「パンション」という呼び名の宿泊施設がある。「パン付きのマンション」だという説もあるが、食事付きのマンションや寮、食事付きの長期滞在施設を岩手ではパンションと呼んでいるようだ。(今でも岩手七不思議の一つ)

北上に滞在したのは初めてだったが、なんだかとても落ち着く場所だった。きっと、東京から遠いからだと思う。東北新幹線の速達列車が通過するので、感覚的には盛岡より遠い。東京都心からだったら北海道(航空機で行く場合)と同じくらいの時間的距離があるだろう。

フラワーホテルの客室は広く、窓を開ければ虫や小鳥の声がよく聞こえる。

東北新幹線や在来線の線路が見える。駅からは少し遠いが、鉄道マニアでも満足できる環境。

岩手の食材ばかりで作られた「とりわっぱ」。地元の人は全然買っていなかった。やっぱり、観光客向けなの?

これは他地域のスーパーでも見かける岩手の銀河高原ビール。濃い味が特徴。初めて飲んだけど、好みが分かれるかも。1回飲んだらもういいかな。

あまり知られていないが(?)、岩手県は日本酒造りも盛んである。私は新潟のキリっとした日本酒が好きなので、正直、好みではなかったが、雰囲気をよく演出してくれたと思う。

Second Stage 埼玉~東北~北海道編

4日目 その1 北東北突入

この旅が始まって以来、今日は初めて150Kmほどの走行を予定している。一応、前日の睡眠前の10分間だけ、翌日の予定を立てる時間としている。名取を出るとすぐに100万都市・仙台だが、大都会周辺は交通量が多くて時間がかかる。だから、この日は午前4時前に出発した。

仙台周辺のバイパスは今まで見たことがないほど、広くて豪快な道路だ。なんだこれはー。自転車走行可能な歩道もあるが、歩道を進むと交差点の度に遠回りを強いられるので、車道の端を走る。朝食がまだだったので、半田屋(仙台で有名な大衆食堂チェーン)に立ち寄る。

夜明けのタクシードライバーやトラックドライバー、出勤前の土木作業員が数名と、意味不明のサイクリストが1名(私)と言った顔ぶれだ。食後にトイレによると、落書きが凄まじい。卑猥なものが中心だが、「仙台は田舎か?」という問いがあって、別の人が落書きで会話をしているような感じだった。

ちなみに私の答えとしては、仙台は都会か田舎かというと、間違いなく都会だと思う。新幹線も地下鉄もある街が田舎だったら、新幹線はおろか、鉄道路線すらない街は何なのか。鉄道がない街なんて、日本にも沢山ある。

但し、インフラが充実していて人口も沢山いても、雰囲気が田舎という都会もある。だが、仙台は都会だと思う。

今日の走行距離は長い。先へと急ぐ。国道4号の仙台バイパスは直線的で、しかも所々微妙な登りがあるので、精神的に結構やられる。列車と高速道路でしか仙台に行ったことがなかったので、仙台の街がこんなに広いものなのかと驚かされる。仙台って一体どこまで続くのか・・・。本州の7分の3くらいは仙台なのかもしれない、と思えてくるくらい。

ようやく仙台を抜ける。東北本線とは併走はしているが、西に5Kmくらい距離がある所を国道4号線は走っている。感覚的には線路から離れてしまった感じがする。30Kmおきくらいに新幹線の駅があるのが精神的に支えとなっていた。なにかあれば飛び乗れるから。

このあたりを走行していると、道路標識に「大崎」という地名が出てくる。東京の大崎(山手線で言えば品川の隣)は聞いたことがあっても、宮城の大崎は聞いたことがなかった。合併でできた街らしいが、宮城県内では3番目の規模の街だという。新幹線で言うと古川駅のあたりだろう。古川と書いて貰った方がまだわかるが、どこなのかイメージつかない場所を目指して走る不安感というのは、なかなかのものである。

古川、いや大崎を抜けても、まだまだ岩手県には遠い。

おおむね写真のような道を数時間延々と進むと、やがて岩手県一関市に入る。一関は列車で旅しているとよく聞く地名なので安心感を覚える。

後ろを振り返ってもこんな道が延々と続くだけで、遠くに来たのだなぁという感じがする。仙台近辺ではあんなに広かった道路も、ここでは片側一車線。自転車は走りやすい。

岩手県によくあるスーパーのジョイスで食事休憩。私は、カツ丼マニアと言ってもいいくらい、色々な土地でカツ丼を食べる。店で食べるカツ丼よりも、その土地のスーパーのカツ丼が専門だ。岩手県(正確にはジョイス)のカツ丼は全国的にどうかというと、薄味で非常に淡泊な味だった。

カツ丼というのは不思議なもので、見た目が美味しそうでも食べたら不味かったり、反対に不味そうな見た目でも食べたら美味しいというのはよくある。私が好きなカツ丼は、肉が柔らかくて、出汁がよく効いて醤油味がしっかりしているものだ。カツと卵以外の具には、あまり拘りはない。新潟のタレカツ丼など亜種もあるが、卵とじのカツ丼のみを評価対象としている。北海道のコンビニのセイコーマートのカツ丼(500円)をオール5点の頂点カツ丼とし、相対評価である。コストパフォーマンスも評価対象であるから、いくら美味しくても高ければ評価はそれなりになってしまう。

ちなみにジョイスのカツ丼は総合評価で2点というところだろう。厳しいが、好きなものには妥協しないというのが私のポリシーでもある。

その2に続く