標茶

Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

11日目 青春18切符で最果ての街・根室へ

港町・釧路に朝が訪れた。

この日、自転車はそのへんに放置プレイして、鉄道で最果ての街・根室に行くことにした。自転車のオフ日、わかりやすく言うと休息日である。毎日毎日、自転車に乗っていると、体があちこち痛くなるし、特にケツの痛みは深刻なものとなる。

元々、こういう日を作ろうと思って、1日分だけ残した青春18切符を持ってきていた。何かトラブルがあった時のためにと、お守り的に持っていたのだが、明日で使用期限が切れるので、今日、根室までの往復で使ってしまうことにした。

釧路駅始発の快速はなさきに乗ると、2時間くらいで根室に到着。

札幌からの特急は釧路が終着で、釧路から根室までの区間は特急列車が走っていない。そのため、ローカル線としては例外的に、小奇麗な身なりの旅行者やビジネス客が多い。

ルパン三世のラッピング車両なのは、この沿線が作者の地元だからだ。しかし、同じ時刻の列車でもラッピング車両が割り当てになるかどうかは日によってまちまちで、一般人にはわからない。鉄道マニアはきっと、ラッピング車両に乗るためにマニアの情報網で下調べしてからやって来るはずなのに、何の気なしにノホホンと乗れるのはラッキーなことだろう。

ちなみに、私は青春18きっぷや北海道&東日本パスでほぼ毎シーズン旅をするが、時刻表という電話帳みたいな分厚い本を買ったことが人生で一度もない。基本的に、マニアの方は時刻表を持って旅している。鉄道マニアの中には、時刻表マニアなる人達もいて、時刻表を買わないヤツはけしからん!と仰る方もいる。

しかし、私は頭の中にあらかた必要な路線の時刻表データが入っている。だから、あの分厚い本を必要としないのだ。私は仕事道具でも何でも、本質的なものだけに価値を感じ、モノというもの全般に執着することがあまりない。

典型的な分かれ道。根室は北海道本島の最東端にあたる街で、一般人が行ける日本最東端の街だ。北海道の他の沿岸都市と比べて、すっきりした綺麗な街並みが印象的だ。

根室の名物は花咲ガニと、このエスカロップ。昨年はドリアンという根室で有名な喫茶店でエスカロップを食べたが、定休日なのか時間の問題なのか開いていなかったため、大通りのイーストハーバーホテルのレストランに行った。朝食時間帯には提供していないので、ランチ時間帯まで公園で酒などを飲んで過ごす。

根室のスーパーで朝食用の酒やつまみを選んでいる時、ロシア人っぽい女性に『ここのメンチカツ、すごく美味しいんですよ』と薦められた。試食があったので食べてみたが、ちょっと塩コショウが強いというだけで、普通に美味しいと言うレベルだったから買わなかった。その女性は何枚もメンチカツを買っていた。

根室はいい所だ。綺麗な風が吹いている。

帰りの列車では車窓から沢山のシカを目撃する。一般観光客の中年女性グループが歓声をあげる。

釧路の街に戻ると虹が架かっていた。列車の中でこれからのプランをざっと考えた。私は釧路には何度も来ているが、釧路名物とされる勝手丼だけは食べたことがなかった。

勝手丼とは、釧路駅近くにある和商市場で提供されている海鮮丼の一種である。ご飯を買って、好きな具を乗せて作る、バイキング形式の海鮮丼だ。市場ってあまり好きじゃないんだけど、今日で釧路が最後になるので挑戦してみる。

和商市場=勝手丼というくらいの勢いで、市場には勝手丼を提供している店がいくつもあった。街中にあまり活気のない釧路にあって、意外にも活気のある市場内。市場を一周し、30歳くらいのお兄さんの店で頼むことにした。

今は15時45分くらいで、16時半くらいの列車で茅沼駅まで輪行してキャンプ場へ戻ろうと思った。時間に余裕がないため、持ち帰りにしようと思った。お兄さんに聞くと、向かいの店でご飯だけをまず買うらしい。まだあまりお腹か減っていなかったから、ご飯も具も少な目の構成で頼んだ。合計500円ちょっと。これはうまくやると、300円くらいで新鮮なイクラ丼が食べられるのでは?と思った。

輪行の準備が終わり、列車を待っている間に作成した勝手丼を食べる。これは・・・旨い。今回の旅行中で食べたもので、ベスト5に入る旨さだ。観光客用だから、と侮ってはいけない。ぜんぜんいける、旨い。

そういえば、注文している最中に店のお兄さんと会話を交わした。なんでも、お兄さんは私が住んでいる所の隣町である埼玉県春日部市に7年住んでいて、割と最近、地元の釧路に帰ってきたらしい。時間がなかったので話し込めなかったが、海のない埼玉県で海鮮丼を売る仕事はしてなかっただろうし、考えて、考えて、考え抜いた末の帰郷だったに違いない。

釧網本線で茅沼駅へ向かう。茅沼は結構遠くて、45分くらいかかった。自転車だと釧路市街との間に小さな峠を2くらい越えないとならないから、距離的には30キロくらいだけど、やる気がないときには辛い30キロだ。列車も空いていたし、輪行して正解だ。

キャンプ場の管理もしている、憩の家かや沼。日帰り温泉、売店、レストラン、宿泊施設などもある。ツーリングのライダーも泊まっているようだった。温泉はパコと同じような塩辛く、熱い温泉。450円くらいと安くて設備もそこそこ充実している。家の近所にあれば、頻繁に利用するのに・・・と思った。

温泉から出たら、ここに住んでいると思われる猫が。器用に自分で自動ドアを開けて遊びに来てくれた。

ほとんど鳴かない大人しい猫だった。

私は、湧別で食べたあのホタテフライの味が忘れられなかった。ホタテフライのことしか考えることができなくなっていた。

明日以降、あのホタテフライを食べるために、湧別に戻ることを決意した。