
専用サイトから張り付けると、以前はこんな写真を360度グリグリ動かせた
360度カメラといえば「THETA」という時代があった。
旅先でTHETAを頭上に掲げてシャッターボタンを小さく1度押すだけで、その場の空気感を丸ごと持ち帰れる感じが好きだった。シンプル操作で扱いやすく、価格も手頃で、360度写真という新しい体験にワクワクした頃が懐かしい。
だが、気づけばTHETAは自分の中で完全にオワコンになってしまった。理由はいくつかあるが、決定的だったのは、ビジネスユーザー向けに方向転換した結果、個人ユーザーを置き去りにしたメーカーの対応が大きかった。
目次
過去の360度写真が見られなくなった衝撃
THETAで撮った360度写真は、専用アプリやメーカー公式サイトの機能を使うことで、グリグリ動かしながら楽しめた。旅の記録としてはもちろん、公式サイトの機能を使ってブログに埋め込むだけで、閲覧者にも“その場にいる感覚”を届けられるのが魅力だった。
ところが、個人向けの共有機能終了によって「過去に掲載した360度写真が再生できない」という事態が起きた。360度写真に対応したアプリを使えば、自分のPCでは引き続き楽しむことはできるものの、他人に気軽に共有することが難しくなった。
別サイトで沢山掲載していた360度写真は全て動かなくなったのだ。特殊な機能を使っているがゆえ、ブラウザ標準機能では対応できないというのもあるが、THETAで撮った写真の価値が一気に下がった瞬間であった。
サードパーティーのサービスやプラグインを使えば今でも実現できる方法もあるのだろうけど、最も信頼できるメーカー純正の方法が消滅したのは大きかった。
個人向けから業務用にシフトした
THETAはここ数年、個人向けの安価な新モデルが出ていない。アプリやサービスの終了も続き、個人ユーザー向けの事業は縮小している。
一方で、不動産や建設現場向けなどの業務用モデルや関連サービスは強化されている。つまり、THETAは個人向けから業務機材へと方向転換したのだ。その結果、既存の個人ユーザーは置き去りになった。
写真は“切り取る行為”にこそ面白さがあると再認識された
THETAを使っているうちに、360度という仕組みそのものが写真の面白さを薄めていることにも気付いた。
25年ほどカメラをやっているが、写真の魅力とは、本来は世界の一部分をどう切り取るかにある。どこを入れて、どこを捨てるか。その判断が写真の個性になり、撮る人の表現になる。それは日常の風景でも、旅先の風景でも変わらない。
だが、360度カメラは良くも悪くも全てを写してしまう。画質的にも一眼レフはもちろん、スマホカメラにさえ劣るうえに、構図を選ぶ楽しさがなく、撮る側の意思が写真に反映されにくい。旅先でシャッターを切るときの、あの“どこを切り取るか”という緊張感がなくなってしまう。斬新ではあるけれど、純粋なカメラ機材としての面白さは薄い。
カメラ機材としての面白さが次第に感じられなくなるというのも、個人ユーザーの市場が伸び悩んだ理由ではないかと思う。単純にPC取り込みや閲覧が面倒というのもあるが、俺の中でTHETAがオワコン化した内面的な理由は、実はこれが一番大きかったりする。
現状の個人向け360度カメラ市場はどうなっているか
個人向け360度カメラ市場は、THETAが登場した頃の“誰もがワクワクする新ジャンル”ではなく、現状はニッチな領域となっているようだ。
THETAのような写真向けの360度カメラは新モデル発表が止まり、安価な入門機も姿を消した。一方で、Insta360という中国ブランドが動画やSNS向けの機能に重点をおいた機種を展開していて、この市場をほぼ独占している。360度写真を撮るためのカメラというより、アクションカメラのジャンルに近いもので、動画向けの360度カメラだという。
つまり、個人向けにおいての360度カメラは写真用ではなく、主に動画向けの機材としては生き残っているようだ。360度写真の楽しさを求める人にとっては選択肢がほとんどなく、360度写真そのものの文化や市場も縮小していると言えるだろう。







