Third Stage 北海道内陸一周編

Third Stage 北海道内陸一周編

プロローグ 1200キロの旅へ

この話を始める前に、これまでの旅についておさらいしておきたい。

First Stage 埼玉~新潟編
埼玉を出発し、新潟市までの約300Kmの旅。

Second Stage 埼玉~東北~北海道編
埼玉~東北地方を北上、青森県八戸市からフェリーで北海道苫小牧市へ渡った。

Second Stageでは出発から7日目に北海道へゴール。目的地すらロクに決めていなかったので、臨時的に道庁所在地の札幌市をゴールとして、旅を終えた。2日ほど滞在し、「プチ北海道サイクリング」を楽しんだ。

北海道は「サイクリストの聖地」などと言われていて、毎年夏になるとは全国からサイクリストが集結する。地元なだけに、どこがどう聖地なのか、前回の2日間の滞在ではよくわからなかったのが実情。5月だったので、まだ夏という感じではなかったのも要因かもしれない。

北海道は私の地元で、これまでも列車等で全道を回ったことは何回もあるが、幼少期や青年期を過ごした場所を自転車で巡ってみるのも面白いのではないか? 何か重要な発見があるかもしれない・・・との思いで再び北海道へ自転車とともに渡った記録が、この『北海道内陸一周編』である。

行きは飛行機輪行としたが、飛行機のチケットを予約したのが出発の15時間ほど前で、当然、大した準備もできず(する気もないが)、適当な雰囲気で飛び立った。

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※地図はイメージです

Third Stage 北海道内陸一周編

1日目 その1 16号線ミッドナイト

前回の旅では埼玉から北海道まで自走した。青森県からフェリーを使用し、7日後に北海道へ到達できたのだが、今回は時間と費用節約のため、飛行機で移動する。

LCCのジェットスターを前日に予約。朝6時の便が不便だからか一番安かったので、朝6時に間に合うように成田空港に辿りつかなければならない。ちなみに、電車だと埼玉方面からだと、そんなクソ早い時間には間に合わない。これは東京都内でも、千葉市内でも多分同じ。

だから、こんなクソ早い時間に間に合わすには、余分に金を出して空港近辺のホテルに前泊するか、東京都内発の割高な深夜バスなどを利用しないとならない。

もしくは・・・自走だ。

成田空港は日本を代表する国際空港だが、例の検問などのように、海外の一流国際空港(シンガポールのチャンギ空港とか)のようなスマートさはない。早朝にLCC国内線が飛ぶようになってから午前3時30分にオープンするようになったが、夜間は閉鎖している。チャンギ空港みたいにライフルを持った警備員に見守られながらターミナルで夜明かす、ということはできないのだ。

※補足 このあたりの事情は旅行当時のもので、その後、LCC専用ターミナルがオープンしたり、格安深夜バスが出来たりしました

今回は自宅から空港まで自走する。自宅から成田空港まで直線距離では70Kmほどである。但し、この「70Km」というイメージのせいで、あとで時間設定を後悔することになる。電車でもそうだが、埼玉から東京方面のアクセスは良いが、千葉方面へのアクセスは悪い。例えば、埼玉県の大宮駅から千葉県の柏駅まで行く場合、東武野田線だと乗り換えなしで行けるが、JR東北本線で東京の上野駅まで行き、乗り換えて常磐線で柏まで行った方が、なぜか時間的に早い場合がある。

道路交通も同じで、埼玉から千葉方面のアクセスはそんなによくない。自宅から成田空港に直線的に行ける道路などないので、実際の走行距離は100Km近くになってしまう。おまけにナイトランなので、道を間違う可能性もある。速度もあまり出せない。

まぁ、そうは言っても飛行機は待ってくれないので輪行など荷造りの時間を考えると、遅くとも午前4時には空港に着いていたい。できれば、ターミナルオープンしてすぐの3時半に着いているくらいの余裕を見せたい・・・。などと考えながら、前日の午後11時前に出発。

国道16号線経由で柏方面まで走行する。柏はかなり前に来たことがあるが、意外に遠い感じがする。時計を見るともう午前1時を過ぎようとしている。雨が降ってきた。歩道橋の下に停車して、雨合羽をリュックから引っ張り出す。ロードサイドの深夜営業のレストランには、食事する若い人たち。3時間後には空港に着いていたいので、夜間で雨で路面も濡れている中、ちょっと危ないかなと思いつつも速度を上げる。深夜で車や歩行者はいないので走りやすいが、蒸し暑い。日中は紫外線対策で長袖だが、太陽が出ていないのでTシャツ一枚になる。急ぐ。汗だくだ。だが、休んでいると間に合わない気がする。

柏を過ぎたくらいから「成田空港まで○Km」という標識が見える。暗くて見間違ったかもしれないが、50Kmくらいと出ていた気がする・・・。蒸し暑くて汗だくの中、一瞬、背筋に冷たいものが走る。自転車の荷造り時間を考えたら、間に合わない気がする!

実は、あまりにも突然思い立った旅行ゆえに、出発直前にキャンセルしようかとも思ったのだ。色々な不安が襲ってきたからだ。優柔不断、ここに極まれりだ。しかし、格安がウリのLCCではキャンセルの返金は行われず、勿体ないので決行することにした。しかし現状、空港に向かっている間に飛行機が飛び立ってしまう可能性が出てきた。走行時間の見積もりをミスったっぽい。深夜で終電も終わっているので輪行することもできず、最悪の場合は、深夜で割増料金だがタクシーに自転車ごと乗せてもらうことも考えていた。なんか、もうネガティブスパイラルだ。でも、10が1そうなったとしても、なるべく成田気空港の近くから乗車した方が安くつくので、とにかく急ぐ急ぐ急ぐ。

真っ暗闇に近い道路を走っているとき、急に顔に何か気持ち悪い得体のしれないものが吹きかかる。蜘蛛の巣だー。泣きっ面に蜂とはこのこと。今までも蜘蛛の巣に引っかかったことは何度かあるが、ここまで大規模な蜘蛛の巣に引っかかったのは生まれて初めてだ。手で顔を拭いながらも空港へと急ぐ。

飛行機みたいに絶対に待ってくれないような相手と競争するのは、今後一切ごめんだと思った。何にも束縛されない自由きままなサイクリストでありたいと思って、自転車に乗っていたはずだ。それなのに、今日という日は。

国道16号線を南下すると、やがて北総線の線路の上を通過する。北総線はかつて成田新幹線として計画されていた路線で、成田新幹線が消滅した今はスカイライナーとして成田空港と都内と36分くらいで結んでいる。特急料金のかからない列車でしか成田空港には行ったことがないが、北総線ができたおかげで、埼玉方面からのアクセスが多少良くなった。成田空港は「遠い」とよく言われるけど、埼玉県民にとっては羽田空港も成田と遜色ないくらい遠い。羽田は東京都と神奈川県の県境くらいにあるからだ。千葉県には成田があって、埼玉県は鉄道交通が要だ。

しばらく、この北総線に沿って成田空港へと急ぐ。ニュータウンという呼び名の通り、いかにも新しい街というか、人工的な感じがする地域だ。実際はまだ結構遠いが、着実に空港に近づいている感じがして、少し落ち着きを取り戻す。もしかして、少し前に見た標識の「あと50Km」は最短経路ではなくて、千葉市経由で行った場合ではないのか? などと冷静な思考が蘇る。北総線沿いに行った方が近いはずなので、もう少し走行距離を短くできるのではないか? あと50Kmなのか、40Kmなのか、30Kmなのかで到着時間は全然違ってくる。10分でも20分でも時間に余裕を持って到着したい。飛行機はこれだから嫌だ。

北総線沿いを東に進み、北総線としばしお別れする。深夜だからとはいえ、それにしても真っ暗で山の中を走っているみたいだ。首都圏を走る国道だが、片側一車線の森の中のような道を進んで行く。分岐を間違ったら大変だ・・・。自転車のライトじゃ、周囲の景色なんて全く照らせない。交差点では慎重に進むべき方向を確認する。絶対に間違ってはいけない、阿弥陀くじだ。成田空港を示す標識が最近出てこないが、成田市方面に行けばいいはずだ。

割と成田空港の近くに来ているはずたが、成田空港らしきものは見えない。そもそも、成田市街がどこなのか・・・わからない。そんな不安を覚えながら、森の中のような道を進んで行く。午前3時30分。ターミナルがオープンする時間だ。ターミナルオープンに間に合うのが理想だったが、最悪、ぎりぎりでも乗れればいい。この辺の駅の始発列車は何時だろう? 全然知らないが、空港職員の通勤などもあるので、もしかしたら午前4時くらいから始発があるのかも。輪行したほうがよいのでは? などと疲労困憊の頭で考える。(あとで調べたら、そんな早い時間の列車はないらしい。空港職員は自走で出勤が普通?)

成田市街らしき場所に辿りつく。ここから空港までは10Kmないはずだ。成田空港を示す標識が最近出てこないので不安になるが、スマホにいれた静止画の地図(GPSやデータ通信はできない)をを見ると、成田市街をしばらく北に行けば良いみたいだ。とにかく進む。

「空港通り」という名の通りに出る。飛行機のマークにしたがって、道を曲がる。あ、昔みたことがある空港周辺のホテル群だ! 旅客向けの駐車場業者などもある。午前4時。よし、これなら間に合いそうだ。1時間ないし、2時間に一度は休憩するポリシーだが、ここまでロクに休憩できず走っている。空港通りをひたすら進む。例の検問に差し掛かる。他にも徒歩の人もいるので、空港職員はやはり近所に住んで自力で通っているのだろう。

第2ターミナルに到着。一息ついてから輪行の準備をする。深夜バスで到着したと思われる人達が大勢ターミナルにいる。こんな朝早くからご苦労さんだ(人のこと言えないけど)。

その2に続く

Third Stage 北海道内陸一周編

1日目 その2 軽い気持ちで

成田空港のターミナル入口付近で輪行の準備をする。今回は自転車にワンタッチで付けるキャリアを装備した。これが安物なのであまりよくなく、9Kgまで耐 えられるはずが、実際は2~3Kgじゃないと全く安定しない。使い物にならないので空港で捨てようかと思ったけども、整備用品とか輪行袋とかちょっとした ものを括り付けるのには利用できるだろうと思って、荷物になるが北海道に持っていくことにした。重たい荷物をすべてリュックに入れていると、とても肩が凝る。少しでも軽減したい。

自転車を預ける。午前4時代からご苦労様という感じで(自分も)、自転車をX線の機械に通す。あとは野となれ山となれという気持ちで、係員に自転車を託 す。あとはひたすら、出発時間まで待つ。しかし、みんな午前4時とか空港にいるものなんだなぁ。若い人の観光旅行風の人が多いが、なんていうか、朝から大変だな(自分も)。

飛行機の中は至って快適。ジェットスターは前も乗ったことがあるが、ちょっと狭いくらいで1時間半くらい乗るにはなんでもない。

定刻の7時半頃、新千歳空港に到着。スカイマークなどと違って、現地の天候や気温の案内がないので、少し寂しい。私の自転車は真っ先に職員が手荷物引き渡し部屋の壁に立てかけておいてくれたようで、すぐに手にすることができた。

特に故障等もなく、ターミナルの外で組み立てる。北海道のさわやかな空気を吸い込んで、徐々に前回の北海道旅行の記憶が蘇って来る。

その3に続く