沖縄到着前に千葉県でパンクとは・・・。旅の前途多難を予想させる出来事であった。
世の中には、うまく行くはずなのに思ったように行かないことが案外多い。思ったように行かないのは、辛い。パンク修理にしてもそうだ。パンク修理は自転車メンテナンスの基本中の基本だ。しかも、自分の自転車で、自分でやったことが何度もあるのに、うまく行かない。なぜだ・・・。苛立ちが募る。
というようなことを考えながら、自転車を押して歩くこと数十分、隣の駅近くにあるイオンに到着。首都圏とは思えないほどの広い駐車場は、やはり北海道の街並みを彷彿とさせる。このあたりは何かのアンケートで、「住みたい街第一位」に選ばれたこともあるらしい。北海道みたいな自然と隣り合わせの新しい街に住んで、都心まで電車一本で通勤できることが理由だろう。
休日だというのに駐車場の端の方は車が一台も停まっておらず、同じように端の方にある駐輪場も自転車が一台もない。やはり、北海道みたいだ。余裕がありすぎる。
駐輪場を借りて自転車修理を再開する。建物の影で強風も防げて、さっきよりも落ち着いて修理ができる。そして、初心に帰ってチューブの袋の説明書きを読んでみる。
なになに・・・今までまともに読んだことがなかったが、手順があるようだ。そもそも、やはり車輪は一旦外さないとダメみたいで、ほぼ説明書き通りにやってみる。
一番、根本を間違っていたのは、「チューブをタイヤに入れてからリムに装着」しないとならないという部分だ。言葉だとわかりにくいが、リムに巻き込んでからチューブに入れようとするのは間違いで、今までこれで出来ていたのが不思議な感じ。15分くらいで修理完了。
急がば回れ、急いては事を仕損じる。今回の諺だ。
すでに、もう3日分くらい疲れたので、イオンで少し休む。普段飲まないが栄養ドリンクなどを買ってみる。安いやつも高いやつもそんなに変わらないらしいので、一番安いやつにする。時間は午後7時を回った。成田空港に着くまでは安心できないから、走行を再開して遅れを取り戻す。
北総線沿いの整備された道路を東に進むと、T字路に差し掛かる。国道464号線をずっと行っても良いのだが、松虫姫公園のあたりで北上する。前回も無意識的にそうしたのだが、「なんとなく」北上して「なんとなく」交差点を数回曲がると、また国道464号線に戻る。こうするとショートカットになる。
日曜日の夜だからか、車が前回より多い。国道と言ってもこのあたりは狭い道が続いていて、車が沢山通ると危ない。だが、街灯があったりなかったりなので、自転車のライトだけでは心細い。車が照らしてくれた方が轢かれる可能性はあるものの、視覚的には安全だったりする。
とあるサイクリングの本では、このあたりを「神社などが沢山あって風情ある道」などと紹介していた。夜だから全然わからないが、神社のようなものが沢山ある気がする。
そして、その危険極まりない「風情ある道」を抜けると成田市街へ到着する。全国的や世界的には成田というと「成田空港」が有名だろうが、こうして見ると神社が沢山ある街という気がする。初詣で有名な神社も成田にはある。そもそも、成田市はそんなに規模の大きい街じゃないのに、鉄道路線が複数あるのは、それら神社のおかげでもある。京成本線は神社目的の客を運ぶために作られたとか。
成田空港は以前も書いたが、24時間は開いていない。ただいまの時刻は午後9時。いま行っても朝6時まで待機できない。どこかで時間を潰さないと・・・。成田市内の公津の杜という駅の近くにあるイトーヨーカドーへ行く。沖縄にはイトーヨーカードーもセブンイレブンもないので、この旅、最初で最後のイトーヨーカドーだ。
だが、最初で最後のイトーヨーカドーは午後9時で閉まってしまった。はっきり言って、千葉県のことはよくわからないが、この辺になると東京のベッドタウンというほどではないのだろう。意外に閉店が早い。
近くのスーパー銭湯、華の湯に行く。通常は800円だがWebクーポンを使用すると700円になる。一応、温泉らしきものがあったが、やはり首都圏のスーパー銭湯は地方に比べて高い。
日曜の夜だから、かなり混みあっていた。イトーヨーカドーや近辺の街中には人が全然いなかったが、ここだけは混んでいた。中高年と20歳前後くらいの若い男性が多い。
お湯から上がって併設の食堂に向かう。ここで食べるつもりはなかったが、どっちみち時間を潰さないとならなかった。スーパー銭湯の食堂で食べるのは初めてだが、どんなものか。
カキフライ定食にした。スーパーの半額になったカキフライならよく食べるが、きちんとした店(?)の揚げたてのカキフライを初めて食べる。他の店と比較できないが、スーパーの半額のものよりは、すごく美味しい。
隣席のテーブルの下にエンジ色の水筒がある。誰かの忘れ物かな。しばらくして、コードレス電話を片手に持った40歳くらいの男性店員が探しに来る。「いま見てるんですけど、それらしいものはないですねー・・・」。声をかけようか迷ったがタイミングを逃す。さらにしばらくして、別の50歳くらいの女性店員が探しにくる。声をかける。やっぱり、お客さんの忘れ物だったらしい。
人は、色々なものを忘れる。
午前0時半頃、スーパー銭湯を出る。外はものすごい寒い。持っている服を全部着るが寒い。特に下半身が寒い。沖縄ではどうせ使わないからと、ウインドブレーカーのズボンは持ってこなかった。一日の中で最も寒いのは朝方だ。これからさらに気温は下がる。空港が開く午前3時半まで、どこか屋内で過ごさないと死んでしまう。せっかくだから、成田の街中に行ってみようか。成田なんて滅多に来ないしな。
首都圏に住んでいる人でも、普段、成田市に遊びに行くという人はあまりいない。少なくとも、埼玉県民にはそんな人はいない。成田駅から北東方向に成田空港があり、北西にはイオンなどロードサイド型店舗が集まったエリアがある。そこにラーメン屋の山岡屋があるというので、行ってみる。
うーん、自転車をこぐと凄く寒い。真夏の北海道の峠の下りみたいだ。寒いので押して歩く。なんだか、右足の膝の靭帯が痛む。気のせいならいいが・・・。
山岡家に到着。24時間営業なので、深夜の長距離トラックの運転手やタクシードライバー、夜行性の人などに人気があるのだろう。前にも別の店舗に行ったことがあるので、味については安心できる。
山岡家は札幌に本部があるらしい。北海道にいる時は山岡屋を全く知らなかったが、一応、北海道にも札幌に数店舗、帯広、釧路など主要都市に1店舗ずつくらいあるらしい。でも、関東の国道沿いの方がよく見かける。太麺に濃いめの豚骨系スープ、値段にしては豪華に具など、全体としては好感が持てる。いわゆる北海道ラーメンではないが、基本的には美味しいラーメンだと思う。
こういうラーメン屋にはよくあるのかもしれないが、漫画喫茶並に沢山漫画がある。私は普段は漫画を読まないが、時間を潰すために頭文字Dの漫画を読んで見る。実写版とアニメ版しか見たことがないので、初めて原作を見た。ほんとに「ガァガァガァー」とか「ギャャァー」とか、文字で走行音を表現しているんだなぁと思った。アニメ版と原作は一部省略しているがセリフが大体同じだった。
午前2時40分、店を出る。成田空港へゆっくり向かう。この時間だと、さすがに道路も空いている。国際空港の周りだから、昼夜問わず人が動いているのかと想像するのは間違いだ。なぜなら、成田空港は夜間は「眠っている」。
3時40分、検問所で身分チェックを受けてから空港に到着する。どこの空港もそうだと思うが、成田空港に自転車で来る人は少数派だ。多分、1万人に1人もいない。
自転車で成田空港に来たのは2回目だが、どこを通ったら第2ターミナルなのかよくわからなくて、右往左往する。目の前にターミナルの建物はあるが、駐車場の建物とか立体交差とかで、スンナリたどり着けない・・・。結局、かなり戻って車道の案内を頼りに進んでいく。4時にターミナル到着。
輪行の準備をして自転車を預ける。前回同様、ジェットスター利用。そういえば、少し前までは成田-那覇線や成田-札幌線には、ジェットスター以外にもエアアジアというLCCがあった。エアアジアはジェットスターとの競争に敗れ、日本の国内路線から完全撤退したのだ(記事執筆時)。
エアアジアも利用したことがあるが、機内やサービス、値段はジェットスターとほとんど変わらない。何が悪かったのか。
個人的には「エアアジア」という名前だと思う。日本は「アジア」の一国に過ぎないが、アジアというと貧相なイメージがあって、欧米的な響きのジェットスターを選ぶ人が多かったのではないか。客室乗務員のセクシーな服装やメイクには好みが分かれるところだが、自分はそんなに嫌いではなかった。
エアアジアが撤退したことで、ジェットスター派にも悪影響が出ている。競争相手がいなくなったから、値段が高くなったり、以前より予約がしづらくなった。LCCで言えば、ジェットスターは独占状態だ。東京-那覇線で言えば、あとはスカイマークがいるくらい。
スカイマークと言えば、2012年頃に那覇~宮古島までの路線を開設した。安い日は片道2000円くらいで売り出していた。私もその頃に宮古島に行ったのだが、おそらくスカイマークの宮古島路線のせいで、当時、沖縄の離島で一番人気だった石垣島では観光バブルが弾けた。宮古島は観光客だらけになったが、離島にとって、格安航空会社というのは運命を分ける重大要素なのだ。
ジェットスターの超狭い機内では、自分しか座っていない3人掛けシートの窓際が確保できた。沖縄までの3時間はゆっくり休んでいけそうだ。