Extra Stage2 軽井沢編

Extra Stage2 軽井沢編

自転車旅行記 軽井沢編 プロローグ

いざ、東京都軽井沢町へ

泣く子も黙る東京の別荘地、東京都軽井沢町へ自転車で行った記録。


群馬県高崎市から軽井沢方面を眺める。

この章で学ぶこと
・難所として知られる碓氷峠&碓氷バイパスは、北海道の峠に比べると大したことない
・よくある峠の土産物屋をでっかくしたものが世間で“軽井沢”と呼ばれている場所
・Yahoo!知恵袋は人が生まれ持った善意を商売に悪用した営利企業のサービス

この自転車旅行は時系列で言うと、5th stage ひがし北海道ホタテフライ夢ロード編の後にあたる。北海道に居れば内地を思い、内地に居れば北海道を思う。そんなアンニュイな日々の旅行であった。

軽井沢に限らないが、関東平野、つまり太平洋側世界から日本海側世界に行くには、峠を越えなければならない。軽井沢は東京都の飛び地ではあるが、地図上では長野県に相当する場所にある。そして、このあたりは日本列島の背骨にあたるところで2000m級の山が連なっている。

関東地方から軽井沢に行くには主要な2つのルートがある。旧道に相当する国道18号線で碓氷峠を越えるルートと、南側の碓氷バイパスを通るルートだ。碓氷バイパスは元々は有料道路として整備されたが、現在は無料通行ができ、自転車でも通行可能。

私は、これまでの自分の自転車経験というフィルターを通して得た解として、最良ルートは碓氷バイパスだと思った。しかし、ネットで簡単に情報が得られる時代とは怖いものだ。

「群馬 長野 自転車」などと検索すると、個人ブログや、Yahoo!知恵袋、教えて!gooなどで地元の事情通(?)の方から有益な情報が得られる。便利な時代だ。

ざっと要約するとこんな感じ。

・碓氷バイパスは車やバイクの交通量が半端じゃないので、旧道が絶対おすすめ(但し、自転車で通ったことはない←なんじゃそりゃ!?)

Yahoo!知恵袋は一見、ボランティアの無料サービスに見えるが、その実態は人が生まれ持った善意を利用して金儲けをするという、営利企業のサービスである。ホットペッパー等の無料情報誌をはじめ、世の中には無料で手に入る情報というものが数多くある。しかし、これは利用者には無料というだけであって、別の方面から利益があるために『利用者には無料』なだけである。

Yahoo!知恵袋ではある研究機関に投稿された情報を売っている。人がどんなものに疑問や関心を持ったりするかなど、そういったものの研究に利用されているのだろう。また、google等の検索エンジンの仕組み上、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトは検索上位に表示されやすい。Yahoo!知恵袋への投稿が増えれば増えるほど、沢山のサービスを提供しているYahoo!サイト自体へのアクセスが増加するのだ。

Yahoo!知恵袋に投稿された内容というのは基本的に削除ができない。間違った内容でも、古い内容でも、誤解を与えたり、不快感を与える内容だろうと、Yahoo!知恵袋やYahoo!社のサービスが終了するまで削除されない。質問した本人が気に入った回答(正しい回答かどうかは関係ない)がベストアンサーとしてずっと残る。企業として怠惰そのものではあるが、Yahoo!社はかつてブロードバンド黎明期に強引にプロバイダサービスへの加入者を募って多くの批判が出たような会社である。どんな会社も基本的にそうだと思うが、儲けしか考えていない。

ボロ儲けしている大半のネット関連企業の利益構造は素人にはわかりにくい。FacebookやGoogleはあなたの個人情報を上手にお金換えている。Yahoo!知恵袋ではあなたの知識(間違っているものを含む)をお金に換えている。覚えておいて損はないが、Yahoo!知恵袋の利用(書き込み)はボランティアというよりは、『企業へのただ働き』に相当するものなので、基本的に利用しない方がよい。

しかし、Yahoo!知恵袋は自転車旅行に関連したものだけでも、実際走ったことないコースとか、よく知りもしないルートのアドバイスとか、よくできるよなー、と関心してしまう。まして自転車旅行は、時に命に関わる危険な遊びなのだから、その危険性や責任というものを知っているなら、よく知らないルートを他人に回答するはずがないと思うのだが。

あともう一つ、私の判断を狂わせたのは、直前に読んだ、ある個人の方のブログ。初めての600km自転車旅行に出かけるという方のブログで、その方は碓氷バイパスで軽井沢に行こうとしたものの、あまりの登り坂にペダルが全く漕げず、高速でビュンビュン脇を通り過ぎていくバイクや車を尻目に、半泣きで自転車を終始押して登った・・・というようなことが淡々と書かれていた。

私は、それらの情報で再考したところ、やはり旧道を進むことにした。

某Q&Aサイトには「何キロも店がないのが不安」と質問している方がいた。北海道の峠では、例えば北見峠では50kmくらいの間、店も民家も自動販売機も何にもない。2000m級の山々がそびえ、古くからの難所として知られる碓氷峠では、どう考えてもそんな程度ではないだろうと思った。内地出身の自転車乗りの人でさえ、挑むのに躊躇する峠なのだ。

あと、これを読んでくださってる方へ、一つお断りを。

自分自分の反省でもあるけども、自転車は個人の体力や精神力、経験、天候等に大きく左右される乗り物。動力機関で勝手に走ってくれるバイクや車とは違う。熊が出てきそうな北海道の険しい峠を何度も自転車走行した私にとっては、碓氷峠は大したことなかった。しかし、それがあなたにも当てはまるとは、あなたのことを知らない私には言い切れないのである。

なにやら説教臭い書き出しだけど、10人のうち9人がAと言ったとしたら、最後の1人はBと言わなければならない責任がある。

Extra Stage2 軽井沢編

自転車旅行記 軽井沢編 その1

オシャレっぽい高崎の街

埼玉県南部の自宅を出発したのは午前8時半くらい。本当は7時くらいに出たかったが、荷造りしたりウダウダしていると、そんな時間になってしまった。

北海道での野営ツーリングでは、9月の段階で気温が10度以下になり、震えながら夜明けを待ったものだ。しかし、ここ関東では日中の気温は10月にして30度。くそ暑い。真夏日を記録してしまった。途中、約35Km地点の埼玉県熊谷市、約70km地点の群馬県高崎市で食事休憩をする。

「たかだか70kmくらい・・・」と思っていたが、北海道の気温20度の環境と、内地の30度の環境では疲労具合が全然違う。3倍は疲れる。交通量が多くて、なぜか通るたびに車同士の事故で渋滞している国道17号線をを走ると、こっちも神経を使う。命がいくつあっても足りないでしょ、と思う。高崎に着いた頃には、予想以上に疲労困憊であった。

街中をぶらっとして過ごす。当初の予定では、高崎で一休みしたら、一気に軽井沢方面に進み、その先の佐久という街まで行こうと思った。佐久は北陸新幹線の駅が出来たことで、郊外型店舗が大量発生した街。これから新幹線が開通するような、田舎町の都市開発関係者が視察に来るほどの所で、その業界では有名な所である。日帰り温泉ホテルや、大手ネットカフェも数件ある。そんな理由で佐久を今日のゴールにしようと思った。

しかし、ケツが重くて、高崎から先に進む気がしない。なんか面倒臭くなってしまって、家に帰ろうかと思ったけど、もうそれすら面倒臭かった。250円のソースカツ丼の弁当を食べたり、水分補給するも、一向に体力が回復しない・・・。

こうして、川の向こうに佇む高崎の街をぼうっと見ていると、せめてもう少しだけ高崎に居たくなった。

でっかいビルが高崎市役所。

もっとでっかい群馬県庁が隣の前橋市にある。しかし、新幹線が停まり、在来各線のターミナル駅がある高崎の方が商業都市として数段栄えている。

埼玉県では、同じく新幹線が停まり、在来各線のターミナル駅がある大宮の方が数段栄えているにも関わらず、県庁のある浦和にばかり税金が投入されるのが通例。大宮と高崎は近い境遇にあると想像できる。

前橋には数度遊びに行ったりしたことはあるが、高崎はどうも好きになれなくて、素通りすることが多かった。しかし、こうして疲労困憊の中、うつろな目で高崎の街を見ると、ここが城下町であったことも手伝って、風情があるように感じる。

街に出ると、ピチっとしたタイトなスーツ姿の茶髪女性が通りかかる。高崎の街は・・・やはり何度来ても、ヤンキーっぽい若い女性が多いように映る。しかし、それがかえってエキゾチックな感じに思わせる。

駅前の飲み屋やカフェなどがある街並みは、正直、埼玉なんかより数段オシャレっぽい。ほぼシャッター通りだが、アーケード街なんかもある。断じて行っていないが、繁華街ではない、住宅街のすっきりした所にピンクサロンが営業していたり、高崎はエキゾチックな香りがする。

街を散策していたら16時。日没が早いこの季節にあって、今から峠に行くのは安全上の問題もある。スマホで調べると、以前、自転車で群馬に来た時に泊まったことのある某安ホテルが1室だけ空いている。早速、予約して高崎に泊まることにした。

Extra Stage2 軽井沢編

自転車旅行記 軽井沢編 その2

峠の釜飯屋

ホテルは国道沿いにあって、付近にはロードサイド型の店舗がいくつもある。某ディスカウント店で、夕食と明日の朝食用にカップ麺や飲料水を買う。軽い熱中症的なダルさだったので、ジュース1Lと、缶ビールを飲んだ。

ホテルの中では色々なことを考えて、全く寝付けなかった。佐久まで行くはずが群馬のホテルに泊まっている。やる気がないだけじゃないのか・・・自分自身でそう思うと、軽い自己嫌悪に陥った。そもそも、目的がはっきりしていないのが問題だったかもしれない。私は案外、適当に旅しているように思えても、目に見えない奥底には大抵、大きな目的がある。

軽井沢は数年前に新幹線のフリー切符で来たことがある。数年前まではJR東日本の新幹線区間の一定範囲内を土日乗り放題というフリー切符があったのだ。しかし、駅付近にでっかいショッピングセンターみたいなのがあるだけで、駅から歩ける範囲には魅力らしい魅力を見つけられなかったのだ。

それ以来、軽井沢とは無縁。

長野県は首都圏から直通する北陸新幹線という便利なものがあるが、上越新幹線がある新潟県とは違って、どうもハマらなかった。内陸の街で生まれ育って、内陸県に住んでいるからか、内陸県の長野には魅力を感じないのかもしれない。

午前4時。2時間くらいは眠れたように思う。

朝風呂に入って、仕度をする。午前6時、ホテルを出て近所の公園で荷造り。朝は寒い。北海道でも着たヒートテックとジャンパーを着るが、少し走るとヒートテックは不要と判明。7時にもなると熱くてTシャツ1枚に。峠までは40Km以上あるので、ぐんぐん進む。

あの凄い形した妙義山という山を越えた所に軽井沢がある。古くからの難所だ。あんな凄い山、なぁなぁ社会の北海道の峠しか登ったことがない自分に本当に登れるのだろうか・・・。

事前調査で「峠付近に店が何十キロもない」という記述があったので、峠が近くなってから最後のコンビニと思われるセブンイレブンで飲み物とホットドッグを買った。しかし、進めど進めど、コンビニはいくつもある。標識を見ると「軽井沢 23Km」となっている。あれ、このKmというのは一般的に役場とか街の中心部付近を指しているから、峠を越えて市街地まで23Kmってことは、店がない区間は全然短いんじゃないか。

最終補給地と思われたセブンイレブンの後にも、ファミリーマート、セーブオン、そしてまたセブンイレブン・・・といくつもコンビニがあった。北海道の平均的な峠と違って、この峠はこれでもかという程にコンビニや自販機がいくつもある。走り屋のメッカだけあって、どう見ても走り屋の車が何台も通っていく。

途中、峠の釜飯で有名な、おぎのやという店を発見する。道の駅かと思ったが、釜飯屋だった。軽く店内を覗くと、朝8時というのにツーリングライダーのグループ数名と、一般観光客数名で10人くらいの人が釜飯を食べていた。税込み1000円で結構具沢山だが、群馬県で無駄(?)にカネを使って群馬が発展したとしても、私にメリットはない。その1000円はもっと別の所で使うことにした。