Sixth Stage 沖縄やんばる Special Touring Style

Sixth Stage 沖縄やんばる Special Touring Style

プロローグ ヒトは夢を持ってはいけませんか?


孤独を感じたり自分を見失った時、よく夜空の星を見上げる。

地球に巨大隕石が衝突したり、核ミサイルが発射されたり、日本列島に巨大地震が連鎖発生したりしなくても、ちょっとしたことで人間はあっけなく死んでしまうものだ。

死ぬ前にどうしてもやりたいことの一つ。それが沖縄本島一周サイクリングだ。遡ること約半年前、沖縄本島一周を目指して旅立ったものの、膝の故障でとてもそれどころではなくなってしまい、一周を諦めて半泣きで帰ってきた過去がある。

しかし、サイクリスト&元沖縄中毒患者としては、なんとしてもリベンジを果たしたい。一周約430Kmとサイクリストにとってはそれほどの距離ではないが、やんばると呼ばれる本島北部はジャングルで未開の地。地図の上では沖縄に峠は存在しないことになっているが・・・。

ジェットスターの特売で往復分の復路が1980円でチケットが取れた(実際には支払い手数料、預け荷物料金が別途かかる)ので、急遽、この旅行に旅立つことにした。

以下に今作の舞台となる沖縄本島周辺の地図を示す。

※この旅行記には沖縄本島や周辺の島々の地名が数多く登場します。位置関係を把握してからお読みになると臨場感が増しますので、まず位置関係を頭に焼き付けることをお勧めします。

Sixth Stage 沖縄やんばる Special Touring Style

-7日目 台風19号が沖縄本島直撃

台風シーズンの真っ只中、ここ数年でも超巨大とされる台風19号が沖縄本島に迫っていた。

JALやANAなどの大手航空会社は10月10日~12日頃までの沖縄発着便を欠航の可能性があるとして、無料でキャンセル対応をサイト上で受け付けていた。飛ぶか飛ばないかわからん・・・という状態は人にストレスを与えるので、不要不急の人、要するに遊びに行くだけの観光客とかは無料でキャンセルさせてあげるよ、という大手ならではの配慮なのだ。沖縄では那覇空港が閉鎖され、ローカルスーパーのユニオンですら臨時休業する事態になっている。

ジェットスターはLCCと呼ばれる格安航空会社なので、一般的にはキャンセル対応などができないと世間では思われている。しかし、実際は天候や機材不良による欠航については、返金や変更対応が行われる。それどころか、直前の欠航決定で空港まで来ちゃっている場合はホテル代や食事券なども手配してくれるという。

私は台風が100年に1回しか来ない北海道東部で生まれ育ったので、台風や飛行機欠航についての知識、経験がない。埼玉にいても、なぜかそれほど台風で本当に困ったような経験がない。

どの程度の台風なら飛行機が飛べるのか? そういったものの予測ができず、30分ごとにジェットスターや気象庁のサイトなどを確認して状況を見守った。

ジェットスターは10月11日~12日の沖縄発着全便の欠航を発表。まだ、私が搭乗予定の13日早朝便は欠航が発表されない・・・。どうやら、台風が近くにあっても雨が降っていない場合は風速25m以下なら飛行機は飛ぶらしかった。

成田空港までは今まで通り自走で10時間近くかけて向かうので、空港についた段階で欠航が発表されると精神的ダメージが大きい。早朝なのでホテル代なども出ないし、ただ成田空港まで往復200Kmのサイクリング(決して楽しくない道のり)をするだけになってしまう。

ジェットスターは一般的には変更ができないと思われているが、3500円くらいの手数料と差額が発生する場合は差額を払うことで便の変更ができる。身の回りの準備なども遅れていたので、欠航発表を待つのに痺れを切らして、3500円くらいの手数料を払って出発を1週間後に変更した。

後日談。13日の早朝便は問題なく飛んだようだった。

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1日目 沖縄本島のキャンプ場事情

台風により飛行機を1週間後にずらした。成田空港まではいつも通り国道16号線などを通って向かう。出発は明日の早朝なので前日の日中に移動する。

この旅で使用する自転車。数回の自転車旅行の末に辿り着いた、現時点で最新&最高のラフスタイル自転車旅行仕様車。

今回もキャンプを予定しており、シュラフとテントを持っていくため、1600円の安物リアキャリアを復活させた。せっかく買ったが1度しか使ってなくて勿体無いのと、テントは車体に括り付けられるが、シュラフはどうにもならず。前回の旅行ではシュラフはリュックに入れたが、かなり嵩張るし重たかったのだ。

ちなみに、沖縄本島のキャンプ場事情について。

比較は不幸の始まりだが、あえて比較すれば北海道はキャンプ天国、沖縄はキャンプ地獄と言って良いだろう。沖縄ではキャンプといえば米軍キャンプ(上の写真)か、プロ野球チームのキャンプを意味する。昔から金属加工がお茶の子さいさいで、キャンプ用品メーカーが多い新潟の人達もビックリしそうだが、意外にも沖縄では週末ファミリーキャンプみたいなものは一般的ではないという。

実際問題、首都圏並みに人口過密な南部にはキャンプ場を作る土地の余裕はなく、昼夜問わず戦闘機が飛び交う中部以北に僅かに存在するキャンプ場は、テント1張り1,000~2,000円くらいが相場。

参考までに、県庁所在地の那覇市中心部の安ビジネスホテル(個室、バスルーム、エアコン、ネット環境あり)の相場が1泊2000~3000円くらい。

そのためか、観光を主要産業とし国内屈指の観光県である沖縄は、貧乏ツーリングの人間には避けられている。議題に上がることすら滅多にない。亜熱帯で、冬でも日中は半袖で過ごせるほどの好環境なのに勿体ない・・・。

しかし、執念で沖縄でのキャンプ事情を2週間かけて調べ尽くすと、様々なことがわかった。

ダムだ。通称やんばる、沖縄本島北部にはダムが複数あって、特に宣伝していないがダムサイトのWebサイトにはキャンプの申請書がある。許可が必要だが、ダムサイトなら無料でキャンプできるのだ。その他にも、キャンプ場を名乗っていない、専門施設以外のところがキャンプ場を密かに併設していたりする。例えば、図書館とか民間の植物園とか、辺境の地にあるカフェなどである。

その他には、フェリー代がかかるが近隣の離島だ。沖縄は本島以外にも沢山の有人島がある。そして、その島同士はどこも観光客誘致のライバル関係にある。本島の近隣には安くて上等なキャンプ場を設置している島がいくつかあるのだ。

なかなかネットで調べているだけでは、現地の風みたいなものがわからないのだが、どうも沖縄にはビーチパーリーなる習慣があるらしい。浜辺でバーベキューとか宴会をやって、そのまま浜辺で朝まで酔い潰れて寝たりするイベントだという。これは老若男女問わず、誰でもやるらしいのだが、これが沖縄以外でいうキャンプに相当するものではないのだろうか。

ビーチパーリーとキャンプの違いがはっきりしないが、こっちでいうキャンプよりも宴会重視なのがビーチパーリーなのだろう。

さて、車(自転車)は20時頃、成田市内へと入った。いつもは公津の杜駅付近のイトーヨーカドーなどで過ごすのだが、珍しく成田駅近くを散策してみる。公津の杜駅前には千葉県のキャラクター『チーバくん』のイルミネーションがあった。

私は埼玉県に住んでいるから、チーバくんを見る機会はないので新鮮な感じがする。埼玉県だとコバトンという、胡散臭いハトの一家がそこらじゅういてウンザリするが、埼玉を離れるとコバトンを見なくて済むのだなぁ、としみじみ思う。

成田駅の東側にはスーパーのヤオコーがあり、上等なイートインスペースがあることを発見。山岡屋は飽きたので、ここでカップラーメンや惣菜などを食べる。

21時ころ空港方面へ向かう。

川のほとりで煙草を吸ったりしながらゆっくりと向かう。

22時ころ、国道51号線の寺台インターのあたりで、若い中国人カップルに話しかけられる。成田ビューホテルの名刺を持っていて、女の方にホテルの行き方を英語で尋ねられた。成田ビューホテルは昔、所用で泊まったことがあるから知ってるよ。しかし、英会話なんて久しぶりだな。

「Go strait.about 5Km. But rong road.(意訳:真っ直ぐ行け。でも、お前らには無理)」

実際は5Kmもないと思うが、成田ビューホテルの周辺はバイパスみたいな感じになっていて、外人の歩行者が容易に辿りつけると思えなかったから、適当に5キロってことにした。

女性は異国の地で、外人(私)相手にサバイバルしているが、メガネを掛けたオタクっぽい彼氏は何をしているかというと、iPadで地図を検索中。ていうか、GPSも駆使しているんだろうし、それを見てわかんないんだったら相当だよ。彼氏もiPadも役立たず。こんな使えない彼氏とはすぐ別れたほうがいい。

彼氏は相変わらずiPad検索をしているが、女性は遠くて無理ということを理解したようだ。私も英語力が低いが、彼女も英語力が低いので、お互いよくわからん英語で会話を交わす。じゃあ、私はどうしたらいいの? みたいなことを言っている。

「Right turn Narita Station.about 2Km.And taxi.(意訳:右に曲がって2キロくらいの所に成田駅があるから、そこからタクシーにでも乗れ)」

彼氏は相変わらずiPad検索をしているが、彼女だけから英語でお礼を言われた。彼女は無事にホテルに辿りついて欲しいと思ったが、彼氏は野たれ死んでしまえばいいと思った。礼儀のない彼氏とはすぐ別れたほうがいい。

しかし、なんであんな成田ニュータウンの近くに中国人旅行者がいるんだろうな。典型的な郊外型飲食店などがいくつかあるが、外国の個人旅行者がわざわざ来る場所じゃない。パックツアーで、明日の早朝便で国に帰るという状況で、成田ニュータウンで夜の食事でもして来いという風にバスで降ろされたんだろうか。ホテルまで歩くと距離があるし、パックツアーの会社は中国人をバスで回収するなり、ちゃんとホテルまで戻る方法を案内しとけよ、と思った。

それとも成田駅から歩いて成田ビューホテルに行こうとして迷ったのだろうか。日本人でもそんなことする人あまりいないし、相当、地図力に自信がないと外国でそんなことしないよな。どっちにしろアホだ。

0時過ぎ、成田空港到着。相変わらず、迂回路の案内がわかりにくい。案内板は改善されていたが、紫外線で色が変色してて、薄暗いこともあってやっぱ全然わからん。

この案内看板を見ても私には理解できない・・・。

自転車を解体、荷造りし、なぜか夜明かし欧米人がいっぱいいる夜間待機所で休む。結構、ぐったり。少し眠った感じがする。