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滅びゆく定めの百貨店業界はシステムも人間も古臭すぎる構造的理由

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沖縄最大級のショッピングモール「イオンライカム」

百貨店という業態、いまやビジネスというより年寄り向けの「長寿番組」である。

終わりそうで終わらないが、誰も新規視聴していない“あの感じ”だ。構造は昔のまま、出演者もほぼ固定、たまにテコ入れ企画が入るが視聴率には反映されない。会議では「伝統を守る」が合言葉だが、実際には代替案が思いつかないというのが実態だ。

地方では普通に百貨店跡地にイオンが建つ

地方の風景はシンプルだ。

百貨店が消える→しばらく空白→気づいたら巨大モールが建つ。この流れ、もはや季節行事に近い。

百貨店が「今日は何を買おうか悩んでから来てください」という施設だとすると、モールは「悩んでなくても来ていいし、来たら勝手に何か買うことになる」施設。難易度設定が違いすぎて、同じ小売店というジャンルには思えない。

絶対に若者が寄り付かない設計

百貨店は若者に来てほしいと言いながら、若者が入ると「ここ、お前の来る場所じゃないぞ」という空気を全力で出してくる。

価格、接客、照明、すべてがじわじわHPを削ってくる仕様だ。結果、若者は入口で引き返す。データ上は「来店数ゼロ」なので、分析結果は「若者は来ない」となる。そりゃそうだ、来たらダメな空間なんだから。

高齢者向けコンテンツへの完全依存

百貨店の主力顧客は高齢層。売上上位の顧客は60代〜80代が中心で、高額商品は特に高齢層に依存しきっているというデータがある。そもそも平日昼間の来店客の大半は高齢層だ。

だから、高齢層向けに最適化する。ここまでは合理的。

しかし、その先が問題で、「未来の顧客? それは未来の自分たちが考える」という見事な先送りが発動する。売上はなんとか維持されるが、それは減少の速度がゆっくりなだけである。静かに沈む船の上で「今日はまだ沈んでない」と報告しているようなものだ。

高級路線化でさらに若者が離脱

イオンとの差別化のために高級路線を維持する百貨店業界。価格を上げ、空気を張り詰めさせ、無駄に高級感を演出し、「選ばれし者だけが来る場所」を創り上げる。

その結果どうなるか。誰も来ない。若者はもちろん来ないし、富裕層も「別にここじゃなくてよくない?」となる。つまり、全員に対してちょうどよく刺さらないポジションを確立する。マーケティング的には高度な誰得戦略である。

ECサイトのシステムが古すぎて制作者が地獄

百貨店は利益が出ようと出なかろうと自前でECサイトを運営しているケースがあるが、制作者目線で見ると、百貨店ECサイトはほぼ遺跡である。

触った瞬間に「あ、これ触っちゃいけないやつだ・・・」と分かるタイプのやつだ。

中身は見たこともないレベルのレガシーシステムで、ドキュメントは存在しないか、あっても更新が止まっている。にもかかわらず、外側だけはやたら今っぽくしようとするので、UIだけ現代、だがシステムは昭和というキメラが完成する。

ノーコード、ローコードの今の時代に、ちょっとした商品入れ替えや画像を一枚差し替えるだけでも、手打ちでコード修正が当たり前。本番反映はバッチ作動に非常に時間がかかり、チームで運営しているのに複数人の同時処理が不可能。

致命的なバグが放置された遺跡のようなシステムだが、改修の話になると必ず出てくるのが「それやると全体に影響出るので難しいですね」という言葉。結果、フロント側で無理やり吸収することになるが、その吸収力にも限界がある。

そもそも利益が出ているか怪しいECサイト

そして最大の問題は、そもそも利益が出ているか怪しいことだ。

つまり「直した方がいいのは全員わかっているが、直す金がない」という完全な詰み状態。結果、現場ではこうなる。「とりあえず今回も外側だけ整えましょう」。こうして遺跡の上に薄化粧を重ねる作業が、今日も静かに繰り返されている。

百貨店業界は縦割りの昭和型組織

百貨店の組織は、伝統を大切にする。

縦には強いが横には絶望的に弱い。情報は上に上がるが、横には伝わらない。新しい施策をやろうとすると、関係部署が増えるほど「それうちの担当じゃないです」が連鎖する。最終的にプロジェクトは「検討中」という名の墓に入る。この流れ、社内では日常すぎて誰も疑問に思わないのが一番のホラーである。

売上報告会はお祭り、利益は行方不明

百貨店の売上報告会はだいたい景気がいい。前年対比で売上が上がると拍手が起き、なぜか空気が祝賀ムードになる。

「やりましたね!」と称え合うが、その場で利益の話が出ることはほぼない。粗利? 営業利益? そのあたりは会議室の外に置いてきたらしい。手提げ袋や包装紙のリニューアルでコストが膨らんでも、委託業者の人件費が膨らんでも、とにかく売上が伸びればいいという世界観である。

利益を見ずに売上だけで盛り上がるのは、体重計に乗らずに「痩せた気がする!」と喜んでいるようなものだが、この業界ではそれが日常だ。

数字は出ているはずなのに、なぜか触れられない。触れると空気が悪くなるからなのか、そもそも見ていないのかは不明だが、いずれにしても「儲かっているかどうか」は最後まで明らかにならない。拍手の音だけがやけに大きく、帳簿の中身だけが静かに沈んでいく。

セキュリティ意識の低さ

百貨店業界の独特さの極めつけがこれ。PCや社用スマホのパスワード、なぜか全員同じ。

しかも、それが「password123」みたいなやつで共有されている世界線。運用面はさらにすごい。離席した時に他人が勝手にPCやスマホを触る文化があるのだ。つまり、個人貸与のように見えて、全ての端末が共有物として運用されている。

セキュリティの概念が「守る」ではなく「みんなで使えるようにする」になっているのだ。この環境ではログイン履歴も責任もすべて曖昧になる。共有のPCにパスワードが保存されているのは普通。その結果「誰がやったか分からない」が標準仕様。

もはや、内部不正も外部攻撃も区別がつかない。外部のハッカーからすると「ハッキングしなくても入れる?」と戸惑うレベルでオープンだ。

百貨店業界に未来がない理由

これらの要素は独立して存在しているのではなく、それぞれが緻密な連携を見せ、完璧な負のループを形成しているのが百貨店業界の特徴だ。

古い組織が投資を止め、投資不足が顧客を減らし、顧客減がさらに投資を止める。永久機関としての完成度が成熟している。

百貨店は建物だけが文化財として残る可能性は少しだけあるが、文化財としての価値すらない百貨店は跡地にイオンが建つことで時代のニーズを満たしているのが現状だ。