Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

14日目 北見峠ふたたび

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夜明けの遠軽の太陽の丘キャンプ場。夜明けまで月が眩しかった。この日は夜間寒くて、ついにホッカイロをセイコーマートで急遽買ってきて使った。ホッカイロって普段使わないが、こういう時に使うんだと思った。

調理場でダブルラーメンを作る。北海道ご当地の袋ラーメンで、期待させると悪いからはっきり言うけど別に美味しくはない。何度かの試行錯誤により、固形燃料1つでラーメンを作れるようになった。火元からの距離が近すぎても遠すぎても駄目なのだ。どちらかというと、火元から鍋底までは近いほうが良い。

丸瀬布方面へ向かう途中、跨線橋から列車を撮影しているプロともアマチュア鉄道マニアとも判別しがたい人達がいた。このへんは1日1往復しか列車が停まらないとかの秘境駅が多いので、最近、全国放送のテレビ番組で紹介されたりしているらしい。

例のセイコーマートで鮭のり弁当とCCレモンを買い、丸瀬布の道の駅のベンチで食べる。

というか、この道の駅に限らないが、最近は『ゴミはお持ち帰りください』と書かれてゴミ箱がない道の駅が多い。偉い人の考えることは私はわからないが、この丸瀬布の道の駅を過ぎるとこの先、峠を越えて何十キロも先までマトモにゴミを捨てれる所がない。ゴミを捨てにセイコーマートまで戻るのも嫌だったので、私は律儀にも50キロ先の上川のセイコーマートまで、この弁当の容器のゴミを持っていったのだ。普通の神経の人なら、そのへんの山中に捨ててしまうだろう。

弁当を食べ終えて出発しようかなと思ったところ、ベンチを取り替える工事業者のおじさんに話しかけられる。

私は、そうやって自転車旅の人を珍しがって話しかける人を嫌っていた。

「どこから来たんですか?」

はっきり言おう、私がどこから来て、どこに行こうが貴方には関係ない。そう言うのもなんなので、

「遠軽方面からです」
と、事実を話した。私は今日、遠軽から来たのだ。間違っていない。

「あ・・・遠軽から・・・」
おじさんは、それ以上なにも言えなかった。

2週間くらい前に埼玉から飛行機で新千歳空港に来て、釧路に行って、また札幌方面に戻るところだとか、クソ面倒な話はしたくなかったし、そうやって聞かれることがダルかった。きっと、しょっちゅうナンパされるような美人な女性も同じような気持ちなんだろう・・・。

とかなんとか、色々なことを考えながら北見峠への道を進んでいく。

あとで考えると、自転車旅行は初期段階はまさにストレスフリーで、心に開放感を感じるのだが、ある程度の期間が経つとストレスが溜まってきて心が荒んでくる。

下り列車は午前7時台に一日一本しかない旧白滝駅で記念撮影。山手線なら3分も待てば次の列車が来るが、旧白滝駅では乗り遅れたら次の日まで待たないと列車は来ない。

駅ノートが置かれていて、東京や大阪などの酔狂な鉄道マニアが時々訪れるようだ。

どんなことが書かれているか少し抜粋すると、

「今朝、クソ暑い東京から来ました。
~中略~
こういうふうにずっと変わらない場所があるのはいいことですね。北大鉄道研究会OB なんとかさん」

おいおい・・・。

この場所は昔はかなり人が住んでいたはずだ。だが「変わって」しまって現在誰もいないだけ。いくらアホ国鉄でも誰もいないところに駅は作らないだろう。北海道最強のエリート大学出身の人間の認識って、そんな程度なんでしょうか? と疑問に思った。それとも、クソ暑い東京に住むと、エリートでも頭がイカれてしまうのだろうか。北海道最強のエリート大学のレベルがこんなんだったら、北海道に明るい未来なんて絶対にない。

なんでだかわからないが、この周辺の道路の路肩にはホタテの貝殻が沢山落ちている。沖縄のヤドカリと違って、ホタテは歩いてここに来るわけじゃないし。

峠へと至る上り坂の途中、疲れたのでパーキングエリアっぽいところで小休止をする。小休止をしている私の目の前に失礼にも車が停まった。またあれだろう。白滝とか丸瀬布の連中は嫌がらせをするのが得意なので、どうせまた嫌がらせだな、と直感で思った。

「こんにちは」

50歳くらいのオジサンが車の運転席から慣れ慣れしく話しかけてくる。

もうはっきり言うけど、どいつもこいつも、馴れ馴れしいわ。私は自分の人生や北海道の現実を見つめ直すために、真剣な気持ちで旅をしている。今まで色々な人に出会って、その人達は、この旅に出ないと絶対に出会わないような人達ばかりで、自分や世の中を考えるヒントがいくつも見つかった。自分がこれからの人生で何を大切にしないとならないのか・・・そういうものがわかった。だから、もうあんたみたいな小汚いオジサンは相手にするつもりはない。さっさと消えてくれ。

なんだこのやろう、と言いかけた瞬間、このオジサンはパトロール中のポリ公殿であることが判明。まさか、こんな山の中で職務質問されるとは思わなかった。

「あんた旅行中かい?」
「はい。自転車旅をしてまして、疲れたので休憩してました」
「どこに行くの?」
「旭川方面に行きます」
「どこに泊まってるの?」
「キャンプ場です。昨日は遠軽のキャンプ場に泊まりました」
「ふーん。あんたどこの人さ?」
「ダ埼玉から来ました」
「内地か」

こういう時は淡々とシンプルに答えるのが最良だ。私は以前、鉄道旅行をしていた時に0時近くに秋田駅に着いて5時台の始発で出発するという状況だったため、ホテルに泊まるのが勿体無かった。

行くあてもなく、24時間開放されている駅コンコースで時間を潰そうとしていたのだが、私服警官に職務質問されたことがあった。その経験から、職務質問には淡々と答えるべきであることを知っていた。ポリ公殿は状況により荷物検査したり、身元照会する場合もある。特にやましいことがなくとも、大変面倒なので避けたい。私は『遥かなる北の大地・北海道に憧れてやってきた内地のアホチャリダー』のように振舞うことにした。

「旭川方面ってまだ雨降ってますかね? テレビで大雨だと聞いたんですが・・・」
「それ昨日でしょ。今日は晴れてるっしょ。まぁ、気をつけて行きんしゃい」
「どうもありがとうございます!」

ポリ公殿に一応お礼を言う。この方はこの地域の管轄だろうから、もし事故を起こしたり巻き込まれた時はお世話になるわけだ。こうして、車の一台も通らないような寂れた北見峠を何往復も行ったり来たりしてパトロールしてくれているなら、この先も安心だろう。

ポリ公殿の『旭川方面は晴れている』という情報を信じた私は、峠をどんどん進んでいった。しかし、すごい雲が発生している。登山の世界には観天望気といって、雲の様子などから天気を予測する技術がある。おそらく、この雲はとんでもない大雨の兆しだろう。

ほどなくして、とんでもない大雨となった。上川の街まではまだ10キロ以上ある地点なので、雨宿りする必要があった。

5分くらい走ったら旭川紋別自動車道を屋根代わりとして雨宿りできる場所に到達できた。雨はどんどん強くなった。他人を信じてはいけない。たっぷり1時間以上雨宿りをした。大雨の山の中では特にやることもなく、こういう時こそ職務質問されたいと思ったくらいだ。

1時間半くらいしたら雨が止んだ。上川の街へと向かう。

往路でも利用した、あのベンチのある場所で食事をする。スーパーいろはの惣菜はユニークだ。目玉焼き入りのカツカレーが298円。東京のカレー屋で食べたら1000円くらいするだろう。鶏肉だと思って買ったら、白子の唐揚げだった。ちゃんと白子って書いてあるのに、なぜかわからなかった。

この場所は高質空間形成施設「森のテラス」と言うらしい。

途中の愛別から旭川まではサイクリングロードを通った。

というか、この誰もいなくて超快適なサイクリングロードを30Km走っていくだけで、旭川都心の常盤公園まで行ける。自転車人口全国1位で、サイクリングロード整備に熱心なダ埼玉ですら顔負けだ。国道も十分走りやすいんだけど、さすが北海道。税金の使い方が間違っている!

色々なものが吹っ切れたせいか、時速30キロくらいでぶっ飛ばす。途中、散歩中の犬に追いかけられたが、本気で走っている犬もぶっちぎった。

真っ暗になる前に旭川の街に着いたのは良かったが、へとへとに疲れてしまった。体が痛いとかではなくて、どっちかというと、眠くて眠くて仕方がない。以前行ったことがあるスーパー銭湯に少し道に迷いながら行く。風呂でも眠くて眠くて仕方なかったが、なんとか知っているネットカフェに辿りついて寝る。その間の細かいことは、眠くて眠くて、あまり覚えていない。

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