Fifth Stage ひがし北海道 ホタテフライ夢ロード編

10日目 長野のライダー

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ホテルでぐっすり休んでから、7時過ぎに出発する。ロビーは作業服姿の工事関係の人が沢山いて、現場事務所のようだった。

玄関前には荷物満載のツーリングライダーのバイクが停められていた。40歳くらいの中肉中背の色白男性のバイクで、ホテルの送迎バス運転手のおじさんと「今日は摩周湖の周りを走るんです」などと、ノホホンと話している。

釧路まで70Kmくらいだから昼過ぎには着けるかな、と思った。そして、摩周温泉も悪くないな、機会があったらまた来てみたいな、と思いつつ自転車を走らせる。

鉄道だと釧路の先に根室がある。そもそも、自転車でこのへんを走ることは人生で2回目とはいえ、そう頻繁にあることではない。釧路の先に根室があるという先入観が邪魔して、『根室の標識に従って走れば、必然的に釧路に辿り着く』という間違った考えを生んだ。

たぶん、どこかに分岐点があって、釧路方面と別海経由の根室方面に向かう道路が分かれたのだろう。道路標識から釧路の表示が消えてずいぶん経ってから、道を間違っていることに気づいた。

本来なら国道391号線に進まないとならないところを国道243号線を突っ切ってしまった。去年、こんなホルスタインばかりいる道は通らなかったような気もしたが、やっぱり違う道だった。本来の391号線に戻れる道路があったので、そこを進む。アップダウンの多い道だったので、かなり体力を消耗した。

勉強になったのは、別海の読み方はべつかいでもべっかいでも、どっちでもいいらしい。

途中、道でホクレンの旗を拾う。

これはホクレンのガソリンスタンドで売っているらしく、ツーリングのライダーが記念に買っていって、バイクの後ろに挿して走ったりする。落としても気づかず、ツーリングの時期は道に落ちていることが多い。緑は道東とか、地域によって色が違うらしい。

ホクレンは正式名称をホクレン農業協同組合連合会という。農協の一種のようなものだが、ホクレンは全農の下部組織ではない。札幌駅前の一等地に大きな本部ビルがあり、東京、大阪、名古屋、福岡などにも事務所を構える超巨大組織だ。その事業は農業関係に留まらず、ガソリンスタンド、コンピュータシステム開発、建築、運送など、ほぼ『ゆりかごから墓場まで』。

昼過ぎには釧路市内に着けると思ったが、遠回りしたせいで12時頃にやっと茅沼駅近くのシラルトロ湖キャンプ場に到着。走りながらプランを考えたが、有料だが1泊300円台と安いし、とりあえず2泊分払ってテントを張らして貰い、釧路地区探索のベースキャンプにしようと思った。

受付を済ましてテントを張っていると、正体不明の40代くらいの男性に声をかけられる。

Unknown「コンニチワンコ」

こちらの様子を見てくる男性。最初、このキャンプ場の管理担当者が説明に来たのかと思ったが、フルフェイスヘルメットやライダー用のスーツを着ている風貌から察するに、この人も今日ここに泊まるのだろう。わざわざ挨拶に来るなんて律儀な人だ。

「あなたも今日ここに泊まられるんですか?」
「いやいや。あんたは、こんなところに泊まるの? 湿っぽいしさぁ、熊が出そうじゃん」
「私は北海道で生まれ育った人間ですが、JRの駅がすぐ近くにあるし、そこでおばさんたちがパークゴルフをやっています。こんな人が沢山いる所には熊なんて出ないと思いますよ」
「ふーん。あれ、君はチャリダーさん?」

私はチャリダーと言われるのが嫌いだ。サイクリストと言って頂きたい。語源を調べればわかることだが、チャリというのは子供のスリのことを指す。

「まぁ地元ですし、どうなんでしょうね」
「俺は長野から来たんだ。北海道ツーリングは2回目なんだけど、テントは持ってるけど、ずっとライダーハウスかホテルに泊まってるよ」
「テント持ってきたのに使わないんですか?」
「だって、こんなところに寝るの寂しいじゃん」
「でも、人の多いキャンプ場ってうるさくて眠れなかったりするから、私は寂しい所の方がむしろ好きですけどね」
「ふーん。俺は無理。やっぱ釧路のホテルに泊まるわ」

と、言い残して彼はホテルに向かった。

「軟弱だから俺は釧路のホテルに泊まる」と言い残してキャンプ場を去っていくライダー。

そんなことをいちいち言いに来るような人も、広い世の中にはいるのだと思った。

なんか、道外から北海道にツーリングに来ているライダーって、しょうもない人間ばかりのように思えてならなかった。私はバイクの免許を持っていないから、バイクを運転できる人をすごいと思っていたし、メカにも強くて、ロマンとか何かしらの哲学を持って行動している、孤高な人達だと勘違いしていた。

しかし、実際には茨城のライダーといい、この長野のライダーといい、尊敬に値するような人達ではなかった。

この件があってからは、私はライダー全般に対して悪い印象を持つようになった。エンジンの爆音で動物が逃げるし、空気が汚れる。40くらいにもなった大の男が寂しくて1人ではキャンプ場にも泊まれないとほざいている。長野に帰って、おやきでも食ってなさいと思った。私はこれ以降、ライダーのことをゲイダーと呼ぶことにした。

気を取り直して、私は私で、釧路の街に向かう。まだ寝るには早いし、あくまでベースキャンプを設営しただけである。盗まれたりしてもいいような、そう重要でない荷物はテントに置いていく。街のコインロッカーに預けるより安い。

釧路に向けて走る。しかし、さっきのライダーのことを考えるとイライラする。なぜ、あんなライダーに心が乱されるのか?

釧路の街までは小さな峠を2つくらい越えていかなければならない。アップダウンが激しい。荷物をほとんど積んでいない、クロスバイクに乗った地元と思われる若いサイクリストにあっけなく登りで抜かれる。速えぇ・・・バッカじゃねえの。峠の登りをあんなに速く走れるなんて、すげえよ。尊敬のまなざしで見送る。私の分まで頑張ってくれ・・・。

釧路市内に入る。まだ日が沈むまでは時間があるし、最悪、キャンプ場まで戻れなくても、適当に街で夜を明かせば良いと思った。少し遠いが、釧路市動物園に行くことにした。動物園は街の北西の方にある。しかし、今は15時30分頃で、16時までに入場しないとならない。まだ10キロくらいある。

したがって、ぶっ飛ばさなければ間に合わなかった。

テントを積んでいないので高速走行しやすく、15時59分に到着。ぎりぎりで入場する。

しかし、この釧路市動物園はなまら広い。北海道内ではマイナーな動物園だが、贅沢なほどの広さを誇っている。爬虫類とかの動物の種類ごとにゾーンが別れているが、ゾーンを移動する時に軽い登山道みたいな所を通ったりする。動物の種類も多く、30分で見て周るのは正直厳しい。ゆっくり周れば半日くらいは過ごせるくらいの規模がある。

したがって、1種類の動物を見れる時間は4秒と見積もった。








見る時間がないので主要な動物の写真だけパッパッと撮って、早足で周って、あとでゆっくり写真を見て楽しむ作戦にした。しかし、シャッターチャンスを狙う時間がないので、完璧な撮影とはいかないけど、これはこれでいいだろう。

16時29分に退園。

ふぅー。疲れた。まじで疲れた。もうエクストリーム動物園という感じで、動物園を出てからたっぷり30分は休憩した。教訓。なるべく動物園は時間があるときに、ゆっくり来たほうがいい。

また来た道を戻ると考えるとゲンナリする。そこに釧路市街まで続いていると思われるサイクリングロードを発見。なんだよ、来るときは普通に道路を通ってきたが、隣接してこんな素敵なものがあったとは・・・。

このサイクリングロードは、釧路阿寒自転車道「湿原の夢ロード」と言うらしい。

釧路は北海道では札幌、旭川、函館に次いで4番目に大きな街だが、道都の札幌から遠いこともあって、上位3つの都市より相当寂れている感がある。私は情緒があって釧路が好きなのだが、もし釧路に住むことになっても、どうやって生活の糧を稼いだらよいか、北海道の他の都市以上に想像ができない。こんな素敵なサイクリングロードがあっても利用者は少なくて、釧路の街に着くまで、たった1台しか自転車とすれ違わなかった。

釧路に着いてからはインデアンでカレーを食べた。みよしののカレーなんかとは比較にならないくらい美味しい。

釧路中心部では、くしろ川リバーサイドフェスタ2014というイベントを開催中。

「君は~♪」

10年以上前にラジオで流れていたような歌謡曲。しかし、音程が凄まじい。市民参加のカラオケ大会のようなものが行われていて、街中に凄まじい音量で、お世辞にも上手くはない歌声が響いていた。札幌にも東京にも大阪にも、どこに行くにも遠いという、この釧路ならではの風情を感じる。

MOOにある港の屋台という居酒屋の集まりみたいな場所に行き、以前から気になっていた釧路ラーメンを頼む。40歳代くらいの綺麗な女性が「醤油ラーメンでいい?」と聞き返す。釧路ラーメンにも醤油、味噌、塩とあるらしいが、青森のラーメンみたいのを想像していたので、醤油にする。600円だったかな。

居酒屋なので当然お酒も勧められるが、そんな気分ではなかったので「お冷でいいです」と言うと「あはは」と美人ママ。

釧路のシンボル、幣舞橋の夜景。綺麗な月夜だった。もうテントに戻る気力がなくて、近くのパコで日帰り入浴。仮眠して夜明けを待つことにした。

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