自転車

Sixth Stage 沖縄やんばる Special Touring Style

3日目 南部一回り、そして名護へ

翌朝、昨日の遅れを取り戻すために、まずは南部を回る。

那覇から豊見城、糸満方面へと南下する。

通常、島を走る時は時計回りの方が海を見やすいのだが、あえて反時計周りで走る。途中、豊見城へと向かうバイパスの橋を走っている時、対向車のサイクリストが手を挙げて挨拶した。北海道流の挨拶が沖縄にも伝染しているのだろうか。

昨日の夜、この時期にしては予想以上に日差しが強かったため、新都心のダイソーで子供用の日焼け止めと、サングラスを買った。ダイソーには子供用と記載された日焼け止めは売っていたが、大人用のものはなかった。大人用となにが違うかというと、紫外線を防ぐ能力が低い。能力の高いものはコスト的に100円では売れないのだろう。

新都心にはサンエー那覇メインプレイスと、りうぼうの建物にダイソーがあるが、りうぼうの方が品揃えが良い。メインプレイスのダイソーでは丸くて大きいギャルがするようなサングラスが最良に思えて買ったが、帰路でりうぼうに寄ったらサイクリストがよくしているようなスポーツっぽいサングラスが売られていて後悔した。

糸満に入る。戦争遺産である『ひめゆりの塔』は南部を代表する『観光地』。戦争を知らない修学旅行の中高生が多く立ち寄るので、マーケティング的に彼らが好むような『ほっとけ俺の人生だ』みたいな格言が書かれたTシャツなどが売られている。周囲には土産屋や飲食店が多い。沖縄の『戦争遺産』は商魂逞しい。

さらに進み、天ぷらで有名な奥武島の付近へ差し掛かる。本島とは橋でつながっており、島に渡って入り口近くの公園で一休み。先に進みたかったので、島内の散策はしなかった。

本島に戻り、南部の東側へと進む。

知念村へ。このへんは那覇からそう遠くないが、観光客は少ない。ビーチや海洋レジャーセンターという施設があるが、場末の雰囲気があって割りと居心地がよい。北海道のラーメン屋チェーンのさんぱちもあったが、店はすでに閉鎖されているようだった。昨日買った辻スーパーの惣菜などを食べる。

食事を済ませ、知念村を通り過ぎてから那覇方面に東側から戻る。

ツーリングマップルの情報によれば、このへんの道路には沖縄屈指の景観を誇る椰子の木並木があるそうだ。確かにそれらしいものはあったが、言うほどではなかった。

那覇からは国道58号線経由で北上、どこまで行こうか迷ったが、体力的に問題なさそうだったので名護まで行く。

途中、名護の手前の恩名村に1泊千円くらいと沖縄では比較的安い、県営のキャンプ場があるので寄ってみた。しかし、かなり場末の雰囲気で、受付時間の17時を20分オーバーしていたため、帰り支度をしている警備員みたいな人に『もう職員が帰っちゃったので、すみません』と追い返された。夜は鉄の門で閉められるようだった。キャンプ場に泊まっている人は誰もいなかった。

こんなのは想定内なので、へこんだりもせず、名護市内へ向かう。

名護の南側にある、かねひでで食事を買う。真っ暗な海岸で食べていたら、猫ちゃんが数匹寄ってくる。海岸では真っ暗闇の中、ビーチバレーか何かをしている若い女性達がいる。かねひでのチキンドラムは大好物で、肉付きが良くて味が良い。私はフライドチキンのちょっとしたマニアだが、一度だけKFCで食べた時、味も肉付きも本当にがっかりしたものだ。海岸で休んでから、名護市内のネットカフェで夜を明かした。

Sixth Stage 沖縄やんばる Special Touring Style

2日目 腐れナイチャー

明け方、飛行機は定刻で那覇に向け飛び立った。

天気は良かったが、なぜだか心は曇っていた。機内では「着いたら沖縄そばが食べたい!」などと騒いでいる大学生くらいのグループがいる。沖縄そば・・・私はそんなものどうでもいい。そもそも、私は沖縄が好きなんだろうか。なんで少なからぬ金と時間を使ってまで、2回も自転車持込でサイクリングしなきゃならんのか。飛行機の中ではそんな自問自答を繰り返していた。

定刻、那覇到着。飛行機から降りると、蒸し暑い・・・。さすが亜熱帯だ。10数回の来沖でも10月中旬の季節に来たのは初めてだったと思う。思ったより暑い。季節の選択を間違ったかもしれない。

10月と言えど、キャリーケース(きゃりーぱみゅぱみゅではない)を引っ張った典型的な観光客が多い那覇空港前。

沖縄に来る一般の観光客は3泊4日が一番多くて、次が2泊3日だ。沖縄の37倍の面積がある我が北海道では2泊3日が最多なので心外なのだが、やはり日本は世界最低の時間貧乏国だと思う。

私は沖縄に来た1日目というのが一番辛い。時差があるわけではないが、何かと堅苦しい本土とは雰囲気が違うからだろう。早くあの堅苦しい本土のことは全部忘れて、この沖縄の雰囲気に慣れなくてはならない。本土の人間と沖縄の人間はハートが違うと思う。10数回沖縄に来ている私でも慣れるのに2日~3日はかかるので、3泊4日くらいの日程の一般観光客は慣れてきた頃に本土に帰るという、旅行と言うよりも苦行をやっているようにも思うのだが・・・。

空港前で自転車を組み立て、なにしろ行く当てがないし、とりあえず沖縄の雰囲気に慣れるというか、勘を取り戻そうと思い、適当に那覇の街などに向かう。那覇空港から那覇の街までは近く、歩いたって1時間かからない。

朝ごはんがまだだったので、ブランチを求め赤嶺のスーパーのユニオンに適当に行く。そのまま空港の南の方へ、ぶらりと進む。

この小さい島みたいのは瀬長島というが、橋で渡れる。軽く一周したが、数年前には何もなかったと思うが、中央にマンションのようなものができていた。数分ごとに那覇空港に着陸する飛行機がうるさいと思うが、飛行機マニアにはたまらないだろう。

付近では若い男の子達が軽トラックに貨物用のプラスチックの土台のようなものをロープでくくりつけて、それに乗って遊んでいた。・・・そう、これが沖縄の雰囲気だ。

瀬長島付近の海では海草のようなものを採っている若い人達がいる。本島南部にはキャンプ場はないし、昨日は自宅から100Km走ったうえ、1時間程度の仮眠しかとっていない。よくわかってない人には『サイクリングなんて健康的でいいわね☆』なんて言われたりするが、こういうようなサイクリングは絶対に体に悪いと思う。スマホで調べると、辻町にある某安ホテルが2700円で宿泊者を募っていたので予約する。

このホテルは、なぜかよく利用する。辻町は空港から近いし、街から近いし、観光客も地元の人も、昼間も夜も、それほどいないので案外居心地が良い。

沖縄の雰囲気に慣れるために、夜の街を散歩。那覇にも金沢で有名なゴーゴーカレーが出来ていた。那覇は割りと、東京と同じくらい、居ながらにして全国の食べ物が食べられる場所だと思う。

この日、最大の収穫は辻スーパーで半額の惣菜類を買えたこと。コンビニ的に24時間やってる辻スーパーが、この手の半額セールをやっているとは思わなかった。今日の夜、明日の朝と昼と、計3食分買った。ホテルに電子レンジがあるのは、持ち込み派にはとても便利。

しかし、気分はどこかすっきりせず、腐れナイチャームードだった。腐れナイチャーとは、腐った本土の人という意味だ。腐れナイチャーでやる気がしないので、早々に眠って明日に備えることにした。明日から本気を出そう。おやすみなさい。

Sixth Stage 沖縄やんばる Special Touring Style

1日目 沖縄本島のキャンプ場事情

台風により飛行機を1週間後にずらした。成田空港まではいつも通り国道16号線などを通って向かう。出発は明日の早朝なので前日の日中に移動する。

この旅で使用する自転車。数回の自転車旅行の末に辿り着いた、現時点で最新&最高のラフスタイル自転車旅行仕様車。

今回もキャンプを予定しており、シュラフとテントを持っていくため、1600円の安物リアキャリアを復活させた。せっかく買ったが1度しか使ってなくて勿体無いのと、テントは車体に括り付けられるが、シュラフはどうにもならず。前回の旅行ではシュラフはリュックに入れたが、かなり嵩張るし重たかったのだ。

ちなみに、沖縄本島のキャンプ場事情について。

比較は不幸の始まりだが、あえて比較すれば北海道はキャンプ天国、沖縄はキャンプ地獄と言って良いだろう。沖縄ではキャンプといえば米軍キャンプ(上の写真)か、プロ野球チームのキャンプを意味する。昔から金属加工がお茶の子さいさいで、キャンプ用品メーカーが多い新潟の人達もビックリしそうだが、意外にも沖縄では週末ファミリーキャンプみたいなものは一般的ではないという。

実際問題、首都圏並みに人口過密な南部にはキャンプ場を作る土地の余裕はなく、昼夜問わず戦闘機が飛び交う中部以北に僅かに存在するキャンプ場は、テント1張り1,000~2,000円くらいが相場。

参考までに、県庁所在地の那覇市中心部の安ビジネスホテル(個室、バスルーム、エアコン、ネット環境あり)の相場が1泊2000~3000円くらい。

そのためか、観光を主要産業とし国内屈指の観光県である沖縄は、貧乏ツーリングの人間には避けられている。議題に上がることすら滅多にない。亜熱帯で、冬でも日中は半袖で過ごせるほどの好環境なのに勿体ない・・・。

しかし、執念で沖縄でのキャンプ事情を2週間かけて調べ尽くすと、様々なことがわかった。

ダムだ。通称やんばる、沖縄本島北部にはダムが複数あって、特に宣伝していないがダムサイトのWebサイトにはキャンプの申請書がある。許可が必要だが、ダムサイトなら無料でキャンプできるのだ。その他にも、キャンプ場を名乗っていない、専門施設以外のところがキャンプ場を密かに併設していたりする。例えば、図書館とか民間の植物園とか、辺境の地にあるカフェなどである。

その他には、フェリー代がかかるが近隣の離島だ。沖縄は本島以外にも沢山の有人島がある。そして、その島同士はどこも観光客誘致のライバル関係にある。本島の近隣には安くて上等なキャンプ場を設置している島がいくつかあるのだ。

なかなかネットで調べているだけでは、現地の風みたいなものがわからないのだが、どうも沖縄にはビーチパーリーなる習慣があるらしい。浜辺でバーベキューとか宴会をやって、そのまま浜辺で朝まで酔い潰れて寝たりするイベントだという。これは老若男女問わず、誰でもやるらしいのだが、これが沖縄以外でいうキャンプに相当するものではないのだろうか。

ビーチパーリーとキャンプの違いがはっきりしないが、こっちでいうキャンプよりも宴会重視なのがビーチパーリーなのだろう。

さて、車(自転車)は20時頃、成田市内へと入った。いつもは公津の杜駅付近のイトーヨーカドーなどで過ごすのだが、珍しく成田駅近くを散策してみる。公津の杜駅前には千葉県のキャラクター『チーバくん』のイルミネーションがあった。

私は埼玉県に住んでいるから、チーバくんを見る機会はないので新鮮な感じがする。埼玉県だとコバトンという、胡散臭いハトの一家がそこらじゅういてウンザリするが、埼玉を離れるとコバトンを見なくて済むのだなぁ、としみじみ思う。

成田駅の東側にはスーパーのヤオコーがあり、上等なイートインスペースがあることを発見。山岡屋は飽きたので、ここでカップラーメンや惣菜などを食べる。

21時ころ空港方面へ向かう。

川のほとりで煙草を吸ったりしながらゆっくりと向かう。

22時ころ、国道51号線の寺台インターのあたりで、若い中国人カップルに話しかけられる。成田ビューホテルの名刺を持っていて、女の方にホテルの行き方を英語で尋ねられた。成田ビューホテルは昔、所用で泊まったことがあるから知ってるよ。しかし、英会話なんて久しぶりだな。

「Go strait.about 5Km. But rong road.(意訳:真っ直ぐ行け。でも、お前らには無理)」

実際は5Kmもないと思うが、成田ビューホテルの周辺はバイパスみたいな感じになっていて、外人の歩行者が容易に辿りつけると思えなかったから、適当に5キロってことにした。

女性は異国の地で、外人(私)相手にサバイバルしているが、メガネを掛けたオタクっぽい彼氏は何をしているかというと、iPadで地図を検索中。ていうか、GPSも駆使しているんだろうし、それを見てわかんないんだったら相当だよ。彼氏もiPadも役立たず。こんな使えない彼氏とはすぐ別れたほうがいい。

彼氏は相変わらずiPad検索をしているが、女性は遠くて無理ということを理解したようだ。私も英語力が低いが、彼女も英語力が低いので、お互いよくわからん英語で会話を交わす。じゃあ、私はどうしたらいいの? みたいなことを言っている。

「Right turn Narita Station.about 2Km.And taxi.(意訳:右に曲がって2キロくらいの所に成田駅があるから、そこからタクシーにでも乗れ)」

彼氏は相変わらずiPad検索をしているが、彼女だけから英語でお礼を言われた。彼女は無事にホテルに辿りついて欲しいと思ったが、彼氏は野たれ死んでしまえばいいと思った。礼儀のない彼氏とはすぐ別れたほうがいい。

しかし、なんであんな成田ニュータウンの近くに中国人旅行者がいるんだろうな。典型的な郊外型飲食店などがいくつかあるが、外国の個人旅行者がわざわざ来る場所じゃない。パックツアーで、明日の早朝便で国に帰るという状況で、成田ニュータウンで夜の食事でもして来いという風にバスで降ろされたんだろうか。ホテルまで歩くと距離があるし、パックツアーの会社は中国人をバスで回収するなり、ちゃんとホテルまで戻る方法を案内しとけよ、と思った。

それとも成田駅から歩いて成田ビューホテルに行こうとして迷ったのだろうか。日本人でもそんなことする人あまりいないし、相当、地図力に自信がないと外国でそんなことしないよな。どっちにしろアホだ。

0時過ぎ、成田空港到着。相変わらず、迂回路の案内がわかりにくい。案内板は改善されていたが、紫外線で色が変色してて、薄暗いこともあってやっぱ全然わからん。

この案内看板を見ても私には理解できない・・・。

自転車を解体、荷造りし、なぜか夜明かし欧米人がいっぱいいる夜間待機所で休む。結構、ぐったり。少し眠った感じがする。